□第五夜 赤枯のジャーニー
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5-4 二叉の岐路(2/2)
ふわりと体が浮き上がる。レイヴモンに抱えられ、僅かもしないうちに地上が遠ざかる。
後方へ目をやる。鳳凰たちは私とレイヴモンが消えたことに一瞬の躊躇い、しかし見えぬ敵より眼前のインプモンを優先させたか、お荷物を下ろして速度を上げたベヒーモスを追う。
私はレイヴモンの腕の中、鳳凰たちより更に上空からその背中を見送った。
「……ベルゼブモン様は」
「いい。言わなくて」
レイヴモンの言葉を遮って、私が言えば彼もそれ以上は言わない。分かってる。あの大根役者が。
「それよりあなたは? 確かあの鳥に……」
「いえ、あれは魔性を滅する浄化の火。某は魔に属する身ではありませぬ故、さほどは」
浄化、魔性――嗚呼、と合点がいく。鳳凰たちが探知できたのは“微かな邪気”だけ。だから、私たちの前を通り過ぎて行ったわけだ。
はあ、と溜息を一つ。遠い地平へ視線を巡らせる。
「それで、これからどうするの?」
「身を隠せ、とのご命令で」
「どこに隠れて何するかは言われてないでしょう」
「では……」
小さく首を傾げるレイヴモン。私はふうと息を吐き、インプモンたちの消えた地平を正面に見据え、その視線を次第に左右へ移して、
「最初の、ってどっち行ったっけ」
問えばレイヴモンはその指をくいと左へやる。
「あちらだったかと」
「ってことは」
この先に、彼らがいる。やることは決まった。否、変わらない。隠れながら、当初の目的を果たすだけだ。
「追い付ける?」
「恐らく」
言うが早いか、風が頬を叩き、景色が見る見る間に流れていく。ベヒーモスより格段に早い。けど、レイヴモンが翼で庇ってくれているお陰で、耐えられないほどの風圧でもない。
ぎゅっと、レイヴモンの腕につかまり、そうしてしばし。長い長い空の路をひた走り――やがて、風の音に鋭い金属音や爆音が混じり始める。
見えた。でも、
「始まってる?」
「そのようで」
次第に見えてくるのは、灰の大地の上、あちらこちらでぶつかり合うデジモンたちの姿。先程の軍勢と相対する異形の怪物たちこそが私たちの目的――“ならずもの”というわけか。
しかしこんな戦場のど真ん中でどうやって……。
戦場を眼下に、どうしたものかと二の足を踏む。と、そんな時。
轟音、大気の震え、波及する戦慄。破壊とともに姿を現すそれは――