腐男子は鈍感不良に恋をする

□腐男子と不良、再会はまさかの展開で
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ヤンキーに絡まれ、容姿端麗な不良に助けられた次の日。フジは興奮しながら学校へ向かっていた。
「(昨日の事を早くこーすけ達に話したい…!!)」
その思いでフジの胸は一杯だった。

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ガラガラッ!!

「こーすけ!ラーヒー!」
『!?』
フジが勢いよく教室に飛び込んできたかと思ったら大声で名を呼ぶものだから、呼ばれた2人は飛び上がる。
「ど、どうしたの?フジ」
「と、取り敢えず落ち着け、な?」
「はぁ…はぁ…」
ここまで全力疾走してきたせいか、息切れが凄く、とてもじゃないが喋れる様子には見えないフジに、2人は困惑しながらも優しく声を掛ける。
「はぁ……ふぅ…。あのね!」
「お、おう」
「めっっっっっっっ…!」
「〜ッ溜めるな!」
「っっっっっちゃタイプな人に会った!!」
「…へぇ〜!どんな人どんな人?」
フジの言葉に腐男子センサーを刺激されたヒラが身を乗り出す。
「確かね、上半分はダークブラウンなのに、毛先に行くにつれて赤く染まっていってる不思議な髪色でね、髪も十分赤いんだけど、眼の色はもっと赤かった。深紅、って言った方が良いね。吸い込まれるような、深い紅色だったなぁ。
でね、肌がすっごく白くてさ!アレはまさしく“雪白な肌”だったよ!
しかも男のくせに凄く細くってさ、もう折れちゃうんじゃないか、飛ばされちゃうんじゃないかって心配になる程だったよ!」
「へぇ〜!俺も会ってみたい!」
「背も高いし、すっごい整った顔してたし。俺も、もう一度だけで良いから会いたいなぁ」
と、フジとヒラが盛り上がっている横で、こーすけは考え込んでいた。
「(…髪が半分赤くて、眼も紅くて、細くて、高身長で、整った顔立ちの男で…)」
「でも、その人とはどうやって出会ったの?」
「実はさ、昨日カツアゲされそうになっちゃってさぁ」
「え!それって結構ヤバくない?大丈夫だった?」
「うん、その時にその人が助けてくれてさ。もう凄かったんだよ?!一瞬のうちに何人かを倒しちゃって、それに怯えてヤンキー達逃げちゃったんだよ!」
「あはは!凄いね、ソレ!」
「でしょ!?でも、そう言えばあの服、うちの制服だったんだよね」
「へー!じゃあもしかしたらここで会えるかもね!」
「そうだったら良いんだけどなぁ…」
「(うちの学校の生徒で、喧嘩が強い…?それってもしかしなくても…)キヨ…?」
こーすけが発した言葉に、2人がこーすけを一斉に見る。
「キヨ?って?」
「あー…そのフジを助けたって奴」
「…え、こーすけ、知ってるの!?」
「え!?」
ヒラとフジがこれまた一斉に身を乗り出す。そんな2人を宥めながら、こーすけは多分な、と苦笑した。
「フジが話してたソイツの特徴と、その俺の知ってるキヨって奴の特徴と殆ど一致してたからさ、そうなんじゃねぇかなー、と思ってさ」
「え、こーすけはそのキヨって人と知り合いなの?」
「知り合いっつーか、幼馴染だよ。幼稚園くらいからの付き合いになるなぁ」
「え、そんなに!?」
「おう」
結構長い付き合いになるのだと知って、2人は驚く。
「…ね、こーすけ。そのキヨって人に会えない?」
「あー…分かんねぇな。アイツ、あぁ見えて人見知りでさ。しかも、複雑な事情とか抱え込んでるから、警戒心とかも結構高いし。滅多に他人に心を開かねぇんだよなぁ」
「うー…そこをなんとか!」
「んー…。まぁ、出来るだけ説得してはみるわ」
「お願い!」
そこまで話したところでチャイムが鳴る。
「じゃあ昼休みに一旦話してみるわ」
「オッケー」
そう言って各々席に着いた。

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「…あー…だりぃ」
校舎裏にて、1人の青年が気怠げな様子でそう呟く。青年の周りには、ボロボロな姿で気を失っている生徒が何人も折り重なっており、恐らく先程までこの青年は喧嘩をしていたのだろう。
青年は殴られたことで切れた唇から流れる血液を親指で拭うと、まだ痛む頬にそっと手を当てた。
「(久々に殴られたな…)いってぇ…」
少し眉を寄せてそう呟いた青年は、周りに転がる生徒達を見回し、その紅い瞳をスッと細めた。
つむじから毛先につれてダークブラウンから赤色になっている、不思議で綺麗なグラデーションの髪色に、吸い込まれるような、血の如き深紅の瞳。
学校指定のカッターシャツは着崩されており、開いた胸元からは白い鎖骨が色っぽく見えている。
袖から伸びる腕や、シャツやズボンで見えない部分からでも分かる、男にしては細い体つきと高い身長。
肌は雪のように白く透き通っていて、体つきと言い、肌の色と言い、さぞかし女子が羨むことだろう。
さらにとても整った顔立ちをしていて、髪を伸ばせば女と間違われてもおかしくはないほど端整である。
そんな青年は、暫くボーッとしていたが、誰かがこちらへ近づいて来る気配を感じ、目線だけをそちらへ向けた。やがて姿を現したのは、金髪の少しふくよかな体型をした青年。
「キヨ!ここに居たのか!」
「…こーすけ」
青年…キヨは、金髪の青年…こーすけの姿を見て、ボソリと名を呟く。随分と探していたようで、こーすけは少し汗をかいていた。
「ったく、校舎中探したのに居ねぇから、まさかとは思ったが…また呼び出しか?」
「あぁ。だりぃったらありゃしねー」
「…程々にな…って、殴られたのか?」
頬、青くなってきてんぞ、と心配そうにこーすけがキヨに寄る。
「あー…久々に殴られた。なんか、昨日らしくねーことしたせいか調子狂ってるんだよなぁ」
「らしくないこと?」
「おー。俗に言う“人助け”?ってヤツ?偶々見つけちまってよぉ。見て見ぬ振りすんのも気が引けちまうし、仕方なく助けたんだけどよ」
「…それって、サングラス掛けてる奴?」
「そーそー。?知り合いか?」
「クラスメイトのフジって奴がさ、赤髪紅眼の奴に助けられたって言ってたから、もしかしたらキヨなんじゃねぇかなと思ってさ」
「…ほーん、じゃあ多分俺だ」
そう言いながらキヨはしゃがむ。こーすけ自身がいつも腰に常備している“なんでもポーチ”を漁っていたからだ。きっとガーゼか何かをキヨの頬に貼るのだろう。
「…なぁ、ソイツ、なんて言ってた?」
「あぁ、礼が言いたいから会いたいってさ」
「…礼?」
「礼」
「…そか」
キヨはなんとも言えない表情を浮かべるが、こーすけにはそれがキヨの“照れ隠し”なのだと分かるので、こっそり苦笑する。こーすけが笑ったのが気にくわないのか、キヨは少し赤い顔を手の甲で隠しながらなに笑ってんだ、とこーすけの頭を叩いた。
「ごめんって。ほら、ガーゼ貼れねぇだろ」
こーすけにそう言われ、キヨは渋々正面を向く。キヨの横に同じくしゃがみ込んだこーすけは、消毒液を染み込ませたガーゼをキヨの頬に当て、そっと固定する。液が傷口に染み込む痛みに、キヨは顔を顰める。
「…いてぇ」
「仕方ねぇだろ。それよか、さっき言ってたフジって奴にさ、昼休み会えねぇ?」
「…はぁ?何で」
こーすけは立ち上がると未だしゃがんでいる姿勢のまま己を見上げてくるキヨに呆れた表情をする。
「もう忘れたのかよ;ほら、礼が言いたいから会いたいって言ってたって話したじゃんか」
「…あー…、えー…ヤダ」
あからさまに嫌そうな顔をして却下したキヨに、こーすけはコケそうになる。
「なんでそこまで渋って却下するんだよ!一回だけだから、な?」
この通り!と顔の前に手を合わせて懇願してくるこーすけに、そこまでして断る理由もないキヨは渋々許可する。
「…はぁ、仕方ねぇなぁ…。一回だけだからな」
「!サンキュー、キヨ!」
「はぁ〜…」
機嫌良さげなこーすけとは裏腹に、キヨの機嫌は降下していくのであった。
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