Clap*

□拝啓、親友様
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「わし、結婚するけぇ。」



「は?」





それは、突然のコクハク。





私と昭仁と晴一は高校の頃からの幼なじみで、

それ以上でもそれ以下でもないただの親友。

恋仲になったこともなければ体を繋げたこともない。

そのかわり私は二人の言葉と笑みに翻弄されて泣いている女の子を何人も見てきた。


可哀相に 哀れね


そんな思ってもいない言葉を発したような私の目で見られる彼女たちに比べたら、

私は幾分か幸せなんだと思う。

それは例え私が昭仁に恋心を抱いていて、それを晴一が知っていたとしても、だ。

想いを告げることはしたくない。

今の関係がぎくしゃくするのが嫌だから。

私はあくまでも二人の親友であり、良き理解者でありたい。



そんなことを考えていた矢先だった。

昭仁のところに出入りする女の子を一切見なくなった。

嫌なもやもやが胸を覆った。

普通想い人が女遊びをしなくなったというのは喜ばしい事なんだろうけど

何故か嫌だった。

それを表面に出さないように頑張った。

でも晴一にはばれてたみたい。



ついこの間、

「想いくらい、告げておいても許されるんじゃないん?」

晴一にそう言われて、もやもやの正体がわかった。





「わし、結婚するけぇ。」



「は?」





ケータイ越しに聞こえるいつもと変わらない君の声は、淡々と告げた。





「けっ、こん?」



「そう。結婚。ずっと付き合っとった彼女と。」



「そっか、おめで、とう。
なんか、私と晴一取り残されちゃったな。




「彼氏くらい早く作らんと。

あ、今時間大丈夫だった?すまんの、急に電話して。」



「大丈夫。でも、これから仕事だから、もう切るね。
ホントにおめでとう。

またなんかあったら電話して。」





仕事なんて、ホントはない。

おめでとう、なんて、上辺だけ。


いつかは告げられると解っていたけど、
その言葉がこんなにも破壊力に溢れた言葉だったなんて。


その時、不意に手の中でケータイが鳴った。

ディスプレイには『晴一』の文字。





「…もしもし、」



「堪えれてる?」



「なんとかね。」



「ちゃんと、言えたん?」



「言えるわけ、ないでしょ。」



「後悔しないなら、何も言わんけど。

けどさ、
今日だけは思いっきり泣いても許してもらえるんじゃないん?

じゃ。」





そう言われて切られた。





「なに、それ、訳分かんない、」





その言葉と共に涙は溢れ出していて、







拝啓、親友様

あなたが大好きでした。

あなたを愛していました。

これからもあなたを愛していていいですか?

罪には、なりませんか、?


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