ケロロ軍曹

□その手をつないで
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深海での騒動も終わり、メールとマール…もといマロン人は、ガマ星雲の水の惑星である祖国・マロンスターに無事帰る事が出来たのだった。
メールに洗脳、支配され、冬樹に発砲してしまったギロロは、冬樹に土下座をした。一方で、夏美は秋に帰りを告げ、疲れていたので早々に寝た。


只今の時間、2138(フタヒトサンハチ)。

見上げれば満天の星、耳を澄ませば虫の音。
だが、そんな風情も今のギロロには効果が無く、彼は日向家の庭に駐屯しているテント内であぐらをかいて俯いていた。
どうやら操られていた事を引き摺っているのだろう、ギロロは落ち込んでいる。
何をする訳でもなく、黙然と考え事をしていた。

―――俺とした事が、味方に危害を加えるなんて…
メールもマールも、決して悪いヤツでもない。ただ、ヒトリボッチが嫌だったのだ。
だが、それとこれとは別の話。
俺は冬樹に発砲し、それに激情したケロロにも銃口を向けてしまった。
それからどうもケロロと顔をあわせづらく、今に到る。
夏美を守ろうとしていた自分の、その一節の執着が、俺に隙を発生させた。
軍人失格だな。否、男として失格だ。
夏美を助けたのは、俺じゃない。夏美を守れなかったのは、俺だ。
もしこの感情の所為で、夏美や夏美の大切なヒト、味方を傷付けるようならば、俺は……

「ギーロロッ。」

不意に、テントの外から馴染みのある声がした。
夏美だ。
いつもなら心踊り過ぎて心臓に悪い位なのだが、夏美救出の際自分が役立たずだったので、罪悪感で胸が一杯になる。
「…どうした夏美?」
「ギロロ、中入るわよ。」
「何ですと!?」
あまりの出来事に、どうしてだか敬語になってしまったが、当の本人は、ギロロの狼狽っぷりにも気付かずテントに潜り込んでいった。
「へぇ〜、結構整ってるのね。」
広くもないテントの中で、物珍しそうに周りを見渡す夏美。
「フン、ケロロと一緒にするな。」
ギロロは緊張しながらも、必死で本心を口走らないように使いどころの間違った努力をする。
「あ、そうだ。そのボケガエルがさ…」
「あいつがどうした?」
内心、俺は落胆した。それはそうだろう。用もないのに会いたいとかで夏美が俺の所へ来る筈がないのだ。
「ボケガエルがね、『我輩からじゃ言いづらいから、夏美殿が代わりにギロロを励ましてほしいであります』って言ってたのよ。」
あいつが?
そうか…また悪い事をしてしまったようだな。
あいつに慰められるなんて俺は終わりだと思うが、悔しくはない。
「…そうか。」
ヤツが夏美に頼んだのは、誰でもよかったからじゃない。俺は夏美が好きだから、敢えて気を使ってくれたんだろう。
「ねえギロロ。」
「ん、何だ?」
彼女は照れ臭そうに笑うと、言った。

「オイモ焼いてくれる?」

数か月早めの、季節外れの焚き火と焼き芋。
だがまるでキャンプファイヤーを思わせる。
――――キャンプファイヤー?
瞬時に脳裏を横切ったのは夏美がさらわれる十数分前。あの時、夏美を一人にせず俺が手伝ってやれば大丈夫だったかもしれないのに。
――――というか差し当たって後悔ばかりしている俺は一体何なんだ?
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