ケロロ軍曹

□真実の仮面、虚像の鏡
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いつもの事ではあるが、今日もとんだ厄日だった。


ギロロが7人(匹?)に分化した。


一体化を唯一拒んだ、冷酷非情で闘争本能の塊のギロッペ。

意気地なしで常時くまのぬいぐるみを持っているギロりん。

明るくおおらかで、料理は不味いが家庭的なギロっち。

かの有名韓国俳優にそっくりな、終始笑顔のギロさま。

超越し過ぎで意味不明なポエムを書く葉書職人ギロっこ。

やけに私にモーションかけてくる金髪紳士服のギロぽん。

そして、オリジナルのギロロ。

なんとか元通りに戻ったのはいいけれど、クルルがいっていた<隠れた人格を呼び醒ます>との事。
あの説明が、今になって胸にちくりとトゲが刺さる。

「冬樹ー、ちょっといい?」
オカルト大好きな弟の冬樹ならば、こういう類の事柄には詳しい筈。
私は彼の部屋をノックした。
「ん、どうしたの姉ちゃん?」
冬樹が扉を開くと、私は大きな本棚が見えた。タイトルはどれもマイナーなものばかり。
「あのね、多重人格とかの本ある?」
ああそれなら、そういうと、彼はその本棚から首尾よく本を見つけだした。
「これだよ姉ちゃん。」
「ありがと。」
冬樹に聞いた方が早いかもしれないが、なんとなく自分自身で調べたかった。そう、なんとなく。


その本のタイトルは<残り93%の深層心理>というもの。
読者のハートを掴むような<残り93%>のフレーズがあるが、それなりの厚さに読む気が失せそうになる。
それでも、気になるんだから読み始めた。

人間の心は3つで出来ている。
1つ目はエス(イド)で、「〜したい」などの本能的欲求。
2つ目は自我(エゴ)で、「〜しよう」などの自分自身に対する意志や観念。
3つ目は超自我(スーパーエゴ)で、「〜しなければならない」などの道徳心や義務感。
それで超自我によって強く抑制されたエスは隔離して個別の人格となる。それが二重人格であると記載されている。
私は頑張って、そこまで辿り着いた。
ギロっち、ギロっこはどの部類か分からない。ましてやギロさまなら尚の事。
ギロっちやギロっこはどちらかというと才能に近いだろう。
分かるのはギロッペ、ギロりん、ギロぽんくらいだろうか。
ギロッペは、ギロロにとっての<侵略者>なんだろう。
侵略は義務なのでギロッペは<超自我>といえる。
「…でも…」
私の頭に銃を突き付けたのは、ギロッペだけじゃない。

降伏か死か、好きな方を選べ。

ギロロもだ。
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