キリリク

□風邪
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「やーっぱり…お前様熱があるよ!」



額に手を当て、秀吉の愛妻ねねは言う…



「今日は1日、仕事の事は忘れて寝てなきゃ駄目だよ!」



秀吉はその言葉を聞いて、反論する



「そりゃぁ無理じゃて!ねね!儂、まだ仕事が…」



―ダンッ



ねねは勢いよく畳を叩きつける。



そしてニッコリと微笑み秀吉を見た



「寝てなきゃ…駄目だよ…」



その笑顔が逆に怖かった…



秀吉はコクリと頷き小声で返事を返した。



それを確認すると、ねねは秀吉の頭を優しく撫で、部屋を後にしようとする…



そんな妻を見て秀吉は声を掛ける。



「あっ、ねね…何処に行くんさぁ?」



秀吉の問い掛けに振り返るねね…



「私は隣り町にある、風邪によく効くお薬を貰って来るよ♪」



ねねの心遣いに瞳を潤ませる秀吉



「儂は本当に良い妻を持ったで…ねね、気をつけてな!」



「うんっ、スグに帰るからね♪」



窓から身を乗り出し、ピョンピョンと屋根伝いに跳んで行くねね…



「本当に早く帰れそぉさなぁ…」



ポツリと呟く。



そこへゆっくりと障子が開き、蘭丸が入って来た


「秀吉様…大丈夫ですか?」



そう言って、心配そうに秀吉の元へ駆け寄る。



「蘭丸殿ぉ!あまり近くに寄ると風邪が…」



「構いません!!」



少し怒鳴った風に蘭丸は発した。



「え…?」



構わないの意味が全く理解出来ない…蘭丸殿は風邪をひきたいのか…こんなにしんどいのに…そう思いながら秀吉は頬を掻く。



「構わない…と言われましても…」



そう言う秀吉の方に視線を向ける蘭丸…



その表情に秀吉は驚いた。



顔を真っ赤にし、涙ぐんでいる…



「秀吉…様…」



ジリジリと距離を縮めてくる蘭丸…それに相反して後退りする秀吉…
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