キリリク
□風邪
1ページ/4ページ
「やーっぱり…お前様熱があるよ!」
額に手を当て、秀吉の愛妻ねねは言う…
「今日は1日、仕事の事は忘れて寝てなきゃ駄目だよ!」
秀吉はその言葉を聞いて、反論する
「そりゃぁ無理じゃて!ねね!儂、まだ仕事が…」
―ダンッ
ねねは勢いよく畳を叩きつける。
そしてニッコリと微笑み秀吉を見た
「寝てなきゃ…駄目だよ…」
その笑顔が逆に怖かった…
秀吉はコクリと頷き小声で返事を返した。
それを確認すると、ねねは秀吉の頭を優しく撫で、部屋を後にしようとする…
そんな妻を見て秀吉は声を掛ける。
「あっ、ねね…何処に行くんさぁ?」
秀吉の問い掛けに振り返るねね…
「私は隣り町にある、風邪によく効くお薬を貰って来るよ♪」
ねねの心遣いに瞳を潤ませる秀吉
「儂は本当に良い妻を持ったで…ねね、気をつけてな!」
「うんっ、スグに帰るからね♪」
窓から身を乗り出し、ピョンピョンと屋根伝いに跳んで行くねね…
「本当に早く帰れそぉさなぁ…」
ポツリと呟く。
そこへゆっくりと障子が開き、蘭丸が入って来た
「秀吉様…大丈夫ですか?」
そう言って、心配そうに秀吉の元へ駆け寄る。
「蘭丸殿ぉ!あまり近くに寄ると風邪が…」
「構いません!!」
少し怒鳴った風に蘭丸は発した。
「え…?」
構わないの意味が全く理解出来ない…蘭丸殿は風邪をひきたいのか…こんなにしんどいのに…そう思いながら秀吉は頬を掻く。
「構わない…と言われましても…」
そう言う秀吉の方に視線を向ける蘭丸…
その表情に秀吉は驚いた。
顔を真っ赤にし、涙ぐんでいる…
「秀吉…様…」
ジリジリと距離を縮めてくる蘭丸…それに相反して後退りする秀吉…