小さなお話し

□カラッポの器に愛を
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「まったく…使えないね、君も。」



応接室の椅子に座っている僕の前には、風紀に入ったばかりの一年生の一人。

ずっと憧れだったんです…とかいうくせに、全然使えない。

まあ綺麗な顔してたし、軽い気持ちで風紀委員に入れてあげただけなのに。




「すみ……せ…ん……ッ、でもっ!
こんなこと…ッ!!」


「カツアゲでもすれば金なんて簡単に作れるでしょ?
君だったら線細いし、売りだってできるよね。」


「そ…な…」



愕然と開かれた瞳。
情けないほどにガクガクと全身が震えている彼の表情が、どうしようもないくらいソソられる。

さすが、顔が綺麗という理由で風紀に採用されただけはある。


実用性ばかりを重視してきた風紀は、いつのまにかゴツめの人間ばかりになってしまっている。
僕はネコもタチもできるけれど…ネコばっかりだと身体の負担が大きいのだ。

そういうわけで、まだ味見程度しかしたことないが、目の前の彼は有望のホープ君ったわけなのだが…




「風紀に入りたいって言ったのは君でしょ?
活動費くらい払えないで、どうしたいの?」


「中学生で、10万なんてっ…無理ですっ…。」




泣きながら土下座をする黒い頭を、ローファーでグリグリと踏みつける。

が、何も事態は進展しない。

ぐすぐすと声を漏らすだけの少年をみながら、これじゃあダメになっちゃうな、と思い足をどけた。





「僕のこと好きなんでしょ?」


耳元で優しく、甘く問いかける。


「…っ、もちろんです!
覚えていらっしゃらないかもしれませんが…小学生のころ委員長に助けていただいて…。
オレにとって、委員長はずっとヒーローだったんです…っ。」


…ぜんっぜん覚えてないけどね。


「そうなんだ。
で、君は僕の側にいたくて、風紀に立候補したわけ?」


「は、はい!」


「なら…僕のこと好きなら、やってよ?
知りたいんだ…君が、僕のためにどれだけ尽くせるか。」


「で…も…」



黒い瞳が、迷いに揺らぐ。



「おねがい…ね?」



ささやくように誘えば、頬を染め目元を潤ませた少年は戸惑いながらも言葉をつむぐ。




「……は、い」


「うん、いい子だね。」



僕を愛してくれる、純粋で、愚かで、かわいい僕の下僕。

下僕?…というより、玩具かな?

そうして、もっともっと僕に溺れればいい。




クチュッと音をたてて耳を舐めれば、彼は目をトロンとさせて嬉しそうな顔をした。


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