小さなお話し

□もう届くことないその背中に、
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きっと、お互いに愛し合ってた。

気持ちは一緒だった。



…ただ、愛し方が違っただけ。






彼は人間という生き物が好きで、根っこからボス気質で。

根本的に、僕とは違う。






たとえば、彼は僕の心配はしても風紀委員を辞めてほしいと思わない。

一緒に時間を共有したいとは思うかもしれないけど、それはあくまでお互いに自分の大切にする世界がある中で、それを壊したいとは思わないだろう。





僕は彼を束縛したくて仕方ないけど、彼は違う。

自分らしく生きる僕が好きなのであって、束縛された僕には見向きもしないのだろう。





ディーノは『会えて嬉しい』のほうが大きいけど、僕は『会えなくて苦しい』のほうが大きい。

ディーノは一緒に生きてきたいと言うけど、僕は一緒に死にたいと思う。





…小さな違いが、大きな溝になって。

だんだんとすれ違っていって、けっきょく心の中でこんなにも激しくすべてに嫉妬してしまう。














…このままじゃ、壊してしまうと思った。

僕も、君も。
























夕食を食べてから、クリスマスソングが流れる町をブラブラ歩いて。

立ち寄った人気のない小さな公園のベンチで、僕はその言葉を口にした。



「…別れよう。」


予想通りに目をまんまるにして、固まる彼



「…は、……ちょ、どうしたんだよ…?」



おもしろいくらいに予想通りの反応をするディーノが、愛しくて内側の僕が笑う。



「…ごめん。」


「なん、でだよ……なんで!!」




ごめんね、ディーノ。

このままじゃきっと、僕はおかしくなる。

君を壊したい衝動を抑えきれる自信がないんだ。

…そんな自分を見せて、嫌われるのが怖いんだ。





「…ごめんなさい。
好きな人が、できたんだ。」




呆然とした表情から、信じられないという顔をして、苦しそうに顔を歪めた。



「…いつ、からなんだ?」


「…自分でもわからない。」


「そう、か。」





あ、泣きそう。

でも我慢してくれてるんだ…今泣いたら、僕が傷つくから。

そんな表情しないでほしい。

…愛おしくて、抱きついてしまいそうになる。





「そうか…そう、なんだ、」


「ディーノ…」



一生懸命言い聞かせるように、ディーノが悲しそうにつぶやく。




「…片思い、か?」


「…ううん。」


「…恭弥。
幸せになれよ。」





無理だよ、ディーノ。

僕はあなたしかいらない。

あなたがいないと、幸せになれない。

でも僕が求めれば、優しい貴方はすべて僕に与えてしまう。

だからどうか…まだ僕がおかしくないうちに、嫌いになって。



嫌いにならないで



嫌いになって





「じゃあ、な。」


悲しそうに揺れる瞳を飾るまつげが、震える。






僕に背をむけてその場を去ろうとする彼の背中に、そっと寄り添う。


「……ごめん」


「…ああ」


しばらく彼はそのまま立ち尽くし、それからゆっくりと僕に背を向けたまま歩き出す。








どうしようもないない虚無感とか苦しさがこみあげる中で、唯一残っていた体温さえ雪に雪に奪われていった。




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