小さなお話し

□Regret...
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初めてあなたと出会ったのも、この場所だったね。


あのころの僕はマフィアだとか組織なんて気にもしてなくて、並盛だけを大切にしてた。

今よりずっと自由で孤独だった。



でも…なんでだろう。



思いかえすと、あのころの方がまだマシだった。



心から笑えたのは、僕が仲間を意識して大切にしてた時だけど…
それでも、組織を優先して考えてしまう今よりはずっと幸せだった。




なぜかはわからないけど…

マフィアというこの世界と組織は、僕にはあっていないのかもしれないね。




















「消えなよ。」

左上から振り下ろすようにトンファーを振り下ろすと、男は低いうめき声をだして倒れた。


殺気がないことを確認してから後ろを振り返ると、十数人の男が倒れている。



…殺しはしていない。


銃を持ってきていない僕にとって、トンファーで殺すには何発も殴らなきゃいけない。

それに校舎が血だらけになるのは嫌だったから、足を骨折させて意識を失わせた。






「…なんで、」



なんで、こんな部下しか用意してない?

たしかにレベルは高かったが…キャッローネの精鋭と呼ぶには程遠い人間ばかりだった。

ロマーリオのほうが、ずっと強かった記憶がある。





苛立つ気持ちを抑えるようにトンファーを強く握り締めて、応接室に向かう。




(なんで、日本に来た?
なんで…わざわざ並盛中に来る必要があった?)




強くなる疑問に比例して、だんだんと歩調が速くなっていく。




並森にキャバッローネの支部がある?

キャバッローネの日本の拠点が並盛にあるとしても、それを風紀が気づかないはずはない。




沢田に助けを求めにきた?

それもない…わざわざ日本まで来なくても、イタリアにいる9代目に許しを請えばいいことだ。

ボンゴレとしての正式な決定権をもつのは、いまだ9代目なのだから。





(なんで?)




…嘘だ。
本当はわかってる。



彼はきっと、僕に会いにきた。















応接室のドアは、記憶よりも小さくて、なんだか寂しくなる。


「…いるの?」


声を出して聞いてみるが、中から音はしない。




軽くて重い扉をゆっくりとあけると、静まりかえった室内に金髪の君がいた。




「やっぱりここだったんだね。」


「…来てくれると思ってたよ、恭弥。」




いつも僕が使っていた机に座って、ディーノは甘く微笑んだ。


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