小さなお話し
□Regret...
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最初に彼とそういう関係になったのは、僕が中学生のとき。
真っ赤になったディーノに告白されたのが、記憶に鮮明に残ってる。
そのころのひそかな恋心をディーノに抱いていた僕は、その馬鹿みたいな言葉のひとつひとつがすごく嬉しかった。
応接室で告白されて、初めてキスした。
そんなふうにキラキラしていた僕たちの関係は、マフィアの世界に入ってしばらくしてなく変わった。
最初は上手くいっていた…けど、僕がボンゴレを一番に考えるようになってからは、どこか冷めていたような気がする。
お互いに暇をみつけると相手のところにやってきて、とりあえず戦う。
それからだいたい夕食をとって、話しながらお酒を飲む。
たまにキスは許してあげるし、気分がいいと体まで許したこともある。
たしかに触れ合えば愛しさは感じる。
ただ、どれだけ近くにいても、どこか壁ができてしまう。
優先順位が逆転するのは困る。
…その一線が、僕に無意識の壁をつくる。
ディーノは知っていたのか気づかなかったのか…わからないけど、何も言わなかった。
ただ、時々かなしそうな目でじっと見つめられていたことには気づいていた。
知っていながら、無視し続けていた。
それでも、やっぱりすごした時間は本物で、なんだかんだいって『恋人』だったのだと思う。
愛された記憶も、愛した記憶もたくさんある。
…だからといって、僕に迷いがあるわけではないのだが。
「恭さん!!」
「何、騒がしいよ。
あとまだいいって言ってないのに、襖開けないで。」
立ったまま襖を開けた哲に非難の目とトンファーを向けると、慌てて顔を青くした哲が土下座した。
「す、スミマセン、恭さん。」
「わかったならいいよ。
それで?」
「実は…ディーノさんの所在がわかったんです。」
心臓が、ドクンと音をたてる。
「…それで、沢田は僕に殺してこいって?」
「いえ、ボンゴレ側からの情報ではなく…風紀の情報網にひっかかりました。」
「…そう。」
「イタリアの本部から少数ずつ複数の囮を世界各地に出して、それに混じってディーノさんが日本に潜伏している。
…沢田さんがおっしゃっていた情報は正しいようです。
確認されたディーノさんの警護は少数の精鋭で囲まれています。
どう、なされますか?」
「どうって?」
「…沢田側にもこの情報を提供しますか?」
もちろん、沢田に情報を提供するべきだろう。
そうすれば沢田が自分で行って、ケリをつけてくる。
…沢田は、部下に汚い仕事をさせるのを嫌がる人間だから。
でも、
「…沢田には『見つけたから僕がやる』って伝えておいて。」
「!?
でも…」
「で、あの人はどこにいるの?」
「しかし…恭さんにとって、あの人は、」
「どこ?」
哲と僕は、中学のころからずっと一緒だった。
だから言わなくても気づいてるのだろう。
…僕たちの関係に。
「でも…」と反論をあげそうになった口を閉じて、悲しそうに唇をかみ締める哲。
哲が言った場所は、一瞬驚くけど何となく納得できる場所だった。
「…並盛中、です。」
その言葉を聞いてすぐ、僕はスーツの上着を肩にかけて立ち上がる。
「…ありがとう、哲。」
部屋を出る直前に背中を向けた小さくつぶやくと、哲がコクリと小さくうなずくのが視界の端に写った。
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