小さなお話し
□Regret...
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初めて大切なものができたのは、中学生になったときだ。
並盛というその居場所が、僕にとってのかけがえのないものだった。
それからだんだん、僕の大切なものはその『場所』からそこに生活している『人』に変わっていった。
いつのまにか僕は『ボンゴレ』という組織に所属して、そうしてその仲間たちを守るようになった。
それで、よかったんだ。
いつのまにか、仲間よりも組織そのものを守るようになっていった。
自由な浮雲と呼ばれていた自分は消えて、ボンゴレの番犬と呼ばれるほどに組織に執着した。
…何を守っていたのかさえ、もう僕は忘れてしまっていた、。
「キャバッローネが、イタリアのほうでボンゴレ9代目を暗殺しようとしました。」
最初に沢田からその言葉を聞いたとき、誰もが耳を疑った。
驚くのも無理はない…キャバッローネとボンゴレは昔から深い友好関係にあったのだ。
僕たちもキャバッローネには中学生のころから何度も助けられていた。
特に沢田にとってボスのディーノは兄弟子ということもあり、仲がよかったのに。
日本のボンゴレ支部、幹部会議室にそろった10代目ファミリー守護者は、そろって沢田のほうを凝視した。
「そんな…嘘でしょう、十代目?
まさか跳ね馬がそんなことするはず、」
獄寺隼人が、冗談でしょう?と沢田に笑いかける。
「9代目からの勅令だそうです。
これよりキャバッローネのものを見かけたら生け捕りにして本国へ引き渡すこと。
…抵抗した場合は殺せ、と。」
沢田が震えながら机に置いた紙には、たしかに9代目の死炎印が光っている。
どこか悲しげに揺れる炎は、9代目の迷いが現れているようにもみえる。
静まりかえる会議室の中で、僕は沢田に聞いた。
「ボスは…ディーノは、イタリアにいるの?」
沢田は驚いた顔で僕のほうを見た。
それから、ためらうように顔を背けて言った。
「いえ…日本に、いるそうです。」
『...Regret』
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