小さなお話し

□その言葉が、ほしかった
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…あのころのオレ達は、たしかにお互い思いあってた。

オレの仕事の関係で離れている時があっても、その距離を埋められるほど、オレたちは強く結びついていた。




恭弥がボンゴレに入って、キャバッローネもなんだかんだで忙しくなって。

最初はお互いの予定に合わせるようにして作っていた逢瀬の時間も、オレ達のマフィアの中での立場を考えると容易にはいかなくて。



いつのまにかオレたちの間には、見えない壁ができていた。






それでも諦めが悪いオレは、恭弥のことを考えては淡い期待を抱いて電話をする。



「…どうしたの?
何か用件があるの?」



見えていたはずのお互いの気持ちは、あっけなく時間と距離に壊されて。

恭弥に悪気がないとわかっていても、その一言で突き放されたような気持ちになる。


『いや、恭弥の声が聞きたくなってな。』


そんな本音を隠して、ついつい仕事の話ばかりしてしまう。



もしも「会いたい」といって、拒絶されたらと思うと…何か理由がなければ電話できなかった。





「ああ。
じゃあまた詳しい資料を送るよ。」


「早くね。
僕も忙しいんだよ。」


「了解…
恭弥、愛してるぜ。
じゃあな。」


最後の最後で、ちょっとだけ本音を言ってみたり。

恭弥の答えを聞くのが怖くて、いつも自分で電話を切ってしまうオレは卑怯だ。















なぁ…恭弥は、どう思ってる?

オレのことはもう、好きじゃない?
あんな昔のことはもう忘れてる?
…もう、他に好きなやつとか、いるのか?




「ボス、また縁談の話きてるぜ。」

「このごろほんと多いな…。
断るつもりでも、一回くらい会わなきゃいけねぇのは面倒だな…。」

「でもボス…ほんとにそろそろ身を固めた方がいいと思うぜ?」

「いや、でもオレには…」

「坊主とは、もうほとんど会ってねぇだろ?
今は断れる相手からの縁談だからいいが…そのうち言い訳できなくなるぜ?」

「わーってる。」




そう、わかってた。

オレは恭弥という恋人ができてからというもの、他の女を連れて歩いたことがない。

キャバッローネのボスに恋人がいないとなれば、縁談の話も多くなる。



わかってた、はずだった。










「ディーノ、そろそろ家族をもったらどうだ?」

「何言ってるんですか、9代目。
オレはまだ…」

「私の古い友人の娘さんが、ちょうど同じくらいの歳でね。
一度会ってみてくれないか?」




断ろうにも、理由も言えない。

「10代目ファミリーの雲の守護者と付き合ってます。
なので、そのお話は丁重にお断りさせていだただきます。」

そう言えたら、どんなによかったか。










恭弥

キョーヤ…

オレは…どうしたら、いい?












けっきょく断ることもできすに。

かといって、恭弥への電話をかける勇気もなく。

オレはそのまま何もできないままでいた。

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