小さなお話し

□そんな言葉、聞き飽きた
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出会って何年たっただろうか?






「もしもし、恭弥?」


「何、急に電話なんてして。」


「いや、元気かなーって思って。」








僕はボンゴレの幹部になって、忙しさからディーノに会う時間が減った。


あたりまえだ…お互い並半端な忙しさじゃない。
寝る時間さえない時だってあるのだ。



最初は電話をして時間を共有することもあったが…もう8年にもなると、さすがに付き合い始めのような初々しさなんてなくなる。

今じゃ、何かのきっかけでしかお互い連絡なんてとらない。

下手に何度も会えば、彼との関係だってばれてしまう。




それでも、





『…わかった。
この方向で検討するよ。』


『頼むぜ、恭弥。

じゃーな…ぁ、恭弥。』


『何?』


『愛してる
…じゃーなっ。』





いつも、その一言が電話ごしに聞こえる。

それだけで、まだこの関係は続いているのだと思ってしまう僕はバカなのだろうか?


ただの仕事の電話でも、ディーノからというだけで嬉しくなってしまう僕は、










「それで?
何か頼みごとでもあるわけ?
悪いけど僕は綱吉から大きな仕事を頼まれてるから、儲け話でも乗れないよ。」


「だから!
仕事の話じゃねーって!!」


「…本当に違うの?」


「そんな珍しそうに言うなよ…」


「…明日は地球が崩壊するかも。」


「な、そこまで言わなくてもいいだろっ!」





何だかんだ言ってしまうが、本当は嬉しかったりする。

…久しぶりに、仕事以外の電話。



表情を見ることも体温を感じることもできない。
それでもその声が、遠いイタリアから自分の耳に届いていることが奇跡のようにさえ思える。






「なぁ、恭弥。」


「何?」


「…オレ達、このごろずっと会ってないよな。
久しぶりに会わねぇか?」


「都合つけられるの?」


「いや、無理かもしんねーけど…
いつがいいかな。
しばらく何もイベントとかないし…とりあえず来月の初めとか。」


「どうしたの、ほんとに。
来月の初めは僕はニューヨークにいると思うから、会えないかもしれない。」


「そ、か。」


「今月の終わりは?」


「今月いっぱいはオレの方は予定が詰まってるんだ。
…いや、でも……そんなのいくらでも変えられる。」


「無理しなくていいよ。
来月の終わりでも…」


「…それじゃあ、だめなんだ。」






その言葉を聞き返そうとした瞬間、部屋の外から草壁の声が聞こえた。





『恭さん、緊急の連絡が入りました。
例の取引の途中でトラブルだそうです。』





「…ごめん、ディーノ。
緊急の用事が入った。」


「そう、か」


草壁の声は、電話の向こうにも筒抜けだろう。


「終わったら、連絡くれるか?」


「わかった。」





どこか変な彼に戸惑いつつ、僕はそのまま電話を切った。



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