小さなお話し
□そんな言葉、聞き飽きた
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「好きだ。」
応接室から屋上に移動して、やっと噛み殺せると思ったらいきなりこの言葉。
空は真っ青に透き通るような色。
フワフワした白い雲がゆっくりと動いていく。
僕は両手にトンファー、ディーノは片手に鞭を持った状態なのだが、あまりの一言に驚いて動けなかった。
「オレが勝ったら付き合ってくれねぇか?」
「何の冗談?
いいかげんに大人しく噛み殺されなよ。」
「最初は弟子だし手を出すのはまずいと思ったけど、やっぱりあきらめられねぇ。」
「僕は男を抱く趣味なんてない。」
「…いや、体格的にも恭弥が下の方が」
「殺す」
僕が彼の懐に素早く入りこんでトンファーをぶち込もうとした時だ。
「まったく…言っただろ?
敵に攻撃するときは、正面からするなって。」
あっさりと彼の愛用の鞭によって腕ごとトンファーを巻き付けられ、グイッと彼の方に引き付けられる。
「恭弥、愛してる。」
それが、初めての君の「愛してる」だった。
まさか僕自身、男を好きになるなんて思いもしなかった。
いや、自分が他人を好きになること自体が想像しなかった。
たった一言。
…その言葉を言う彼の目を見て、僕は一瞬で心を奪われたのだ。
そうして僕たちは、始まった。
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