小さなお話し
□色ずく瞬間
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「もうそろそろ終わりにしょうぜ、恭弥。」
夕暮れで森が赤く染まりだしたころ、彼は鞭で僕の攻撃を受けながら言った。
「…君、まだ余裕でしょ?」
「いや、だって早く帰らねぇと夕飯食えねぇぜー?」
「…」
「あれ食えなかったら、夕飯カップラーメンだぜ?」
「……」
そう言っている間にも僕は絶えず攻撃を繰り返す。
だが彼は、まだ余裕そうに攻撃を避けている。
最初に会ったときよりは、攻撃がかする回数も、彼が反撃する回数も多くはなっている…
けど…
…ムカツク。
……でも…
…カップラーメンなんて嫌だ。
それに今日は朝から頭痛が酷い。
僕はしぶしぶトンファーをおろした。
何故僕がこんな山奥にいるのかというと、彼いわく
「いろいろなシチュエーションで特訓した方がいいだろ?」
だそうだ。
もともと、何故彼が僕に修行をしているのかさえよくわからない。
ただ赤ん坊に関係があるってことだけ。
…理由なんていい。
ただ、僕は誰よりも強くありたい。
だから彼を噛み殺す。
それだけだ。