小さなお話し

□その言葉が、ほしかった
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最初に好きだと思ったのは、初めて恭弥と訓練をした時。






中学生にしては素早く、打撃一つも重くて、なにより生まれもってのセンスや直感がいい。

荒っぽいところや、経験の無さはまだまだだが…ちゃんと鍛えれば、将来はボンゴレに反発する奴らの脅威になるだろう。

初めての弟子に上手く教えられるかは心配だが、オレの出来る限りのことをしてやりたいな。



…そんなことを考えながら屋上で恭弥の相手をしている時だ。










「考え事してる暇なんて無いよ」




ぼんやりしたオレにムカついたのだろう。

気づいた時には、ムッとした顔の恭弥が素早くオレの背後でトンファーを振り上げていた。


予測していなかったの動きに過剰に反応してしまい、つい手加減無しで鞭を振るってしまう。




「しまっ、」




しまった、と言い終わる前に、すでに鞭は恭弥の腕と頬を深く傷をつけていた。


手前に出ていた腕の方はかなり深くえぐってしまったのだろう。

ボタッと血の塊が落ちる音がした。



「やべっ、恭弥…!!」


「…っ、」



さすがにこれはやり過ぎだ。
あまり感情を表に出そうとしない恭弥だが、今は痛そうに顔を歪めている。


側で見ていたロマーリオが、あわててかけよってくるのが視界の端っこに映った。



「きょ、」


「近づくなっ!!」



恭弥は今までよりも鋭い殺気を放ちながら、叫んだ。
そのあまりの勢いに、オレもロマーリオも思わず立ち止まる。



恭弥は自分の制服のカッターの腕の部分を無事だった方の手で引きちぎって、怪我をした方の腕に手馴れたように巻きつける。



出血をとめる応急処置としては一番適切だろう。

だが、そんなことで完全に血は止まらない。
巻いた布もあっという間に血で染まっていく。



「恭弥、すぐ病院に…」


「まだ戦える。」


「は!?」


「まだ…僕は負けてない…っ!」








刺すようにオレを睨む瞳

何の汚れも無く、何にも囚われることのないまっすぐな瞳




憧れの一種かもしれない
でも、あまりにも綺麗すぎて少し怖いとも思った


血に濡れながらも光を失わない瞳に、オレはどうしようもなく心を奪われた
















それからトンファーを離そうとしない恭弥をいったん気絶させ、病院でちゃんと治療させた。


「明日も朝10時に屋上な。」


意識をとりもどした不機嫌な恭弥は今にもオレにトンファーを突き出しそうなほどに殺気をおびていたが、この一言であっさり引き下がってくれた。

きっと今の状態で戦うより、明日に備えて体を休めた方がいいと判断したのだろう。




無言で去っていく恭弥の後ろ姿は、思っていたより全然小さくて。

その背中を抱きしめてやりたいと思うほどに、オレは会って一日もたたない中学生の恭弥を好きになっていた。



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