短編集

□おおかみの耳は正直者
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此処は、飛空挺の庭で運営されている小さな喫茶店。

窓際隅っこの席に座る二人の冒険者。

お互いに色の違うおおかみ耳を生やしている。


「それじゃ、頼む」

「うん、わかったよ」


黒いおおかみ耳を生やしている少年は紙を封筒に入れ烙印を押し、
青白いおおかみ耳を生やしている少女に封筒を渡す。
少女は封筒を受け取り、ポケットに閉まった。


「お待たせしました。"はにゅうめん"をお待ちの方〜」

「あ、それボク〜」

「季節のデザートセットの方〜」

「こっちに頼む」


少女の前には"はにゅうめん"が、少年の前にはデザートセットが置かれた。


「ご注文は以上でお揃いでしょうか?」

「あぁ」

「それでは、ごゆっくりどうぞ」


店員は一礼して離れていった。


「すごいね〜。煮麺じゃなくて"はにゅうめん"があるなんて」

「いや、どうみても煮麺なんだが…」


少女は割り箸を割って、ズルズルと麺を啜る。


「あ、ほんほは。ひゅふへんほふぁふぁらはひ(あ、ほんとだ。煮麺と変わらない)」

「食べながら喋るな」


少女は聞いているのか聞いていないのか分からないが、美味しそうに"はにゅうめん"を食べ進める。

自分もデザートを頬張る。

口の中でふんわりとしたスポンジとムースが溶けて、甘い香りが口の中を満たす。


「あ!」


"はにゅうめん"を食べていた少女は手を止め、こちらを見ていた。


「どうした?」

「祥吾さん嬉しそうにしているな〜と」


どうしてそう見える?と問いかけると、


「祥吾さんの耳が垂れてる時は幸せなときだって、ひこにゃんが言ってたよ?」

「あいつ…ッ!」


過去に比古や夕太が食事中に

「祥吾(さん)、美味しそうに食べるね(食べますね)」

と言ってきたことはあるが、理由を聞いても答えてはくれなかった。

怒りを覚え、暴食を始める。


「ふふっ♪」


見事な暴食っぷりだが、耳だけは垂れたままだった。

会計はブラックカードで支払い、店前で別れた後ひなたぼっこの家に向かった。


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