保管倉庫
□始まりは雷と暗闇と共に
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「本当、鴨川さんは雷が苦手だねぇ」
「はい…」
「そういえば、この間めずらしく停電した時も少しパニック起こしてたっけねぇ」
あの時は、この食堂で遅めの昼食をとっていた時に停電が起こった。
食堂のおばちゃんや数人の研究員に醜態を晒している。
「ぅう……はい。突然真っ暗になるの苦手なんですよ…」
「でも、この研究所に勤めだした頃は平気だったわよね?」
「はい」
おばちゃんは僕や兄さんが勤める前からここにいる。
「なんで、雷や暗いのが苦手になったんだい?」
おばちゃんはそう僕に尋ねた。
「う〜ん…なんででしょう…?」
きっと、苦手になるきっかけがあった筈だ。
ここに勤め始めた頃から今までを思い返してみたが…。
「……心当たりないです」
「突然苦手になる、なんてないだろうしねぇ…」
おばちゃんの言う通りだ。
僕はいつから雷と暗闇が怖くなったのだろう?
「「…うーん…」」
二人して唸る。
遠くから微かに、誰かの笑い声が聞こえた気がした。
「………」
私は窓の外を睨みつけた。
まだ夕立はおさまりそうにない。
仕方がないので、自分の机に戻る。
「…雷は、嫌いだ」
そう呟く。