保管倉庫
□(タイトル未定)
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最近、私が良く聞く言葉。
『哲夫の事、食べちゃ駄目?』
…居候の自称鬼から送られる言葉だ。
――――――――――
「テーツーオー、朝だよー!」
未だ夢の中の家主を揺する居候の極卒。
「―――ふぇ?……ん、ふぁい…」
寝ぼけながら返事はするものの、中々布団から出てこない。
「ひょひょっ、寝起きが悪いと一口味見しちゃうよ?」
「起きます」
あっさりと起き上がる鴨川。
「……チッ」
「はっきりと舌打ちしないで下さい極卒君」
極卒が鴨川宅に居候し始めて三ヶ月、毎朝こんなやり取りが必ず行われている。
「美味しそうなのになー。哲夫」
「朝ご飯食べてる最中に言わないで下さい。いらないんだったら貰っちゃいますよ、塩鮭」
まだ手付かずである極卒の分の塩鮭を箸で取ろうとする鴨川。
「きひょ!?駄目それ僕のおかずー!」
慌てて極卒は皿ごと塩鮭を避難させた。
「やれやれ……はい、ごちそうさま」
一足早く朝食を済ませた鴨川は、食器を片付けに台所へ向かう最中ポツリと呟く。
「…淀ジョルに殺されるよりかはマシですけどね…」
「それじゃ、淀川が哲夫の息の根を止めかけた時に横取りすればいっか」
塩鮭を丸かじりしながら言う極卒。
「流石、地獄出身の鬼と言うだけあって地獄耳ですね。というか横取り出来るなら助けて下さいよ」
「んー…じゃあさ、淀川に襲われたとか他諸々の事情で哲夫が死に掛けた時、助かる場合は食べないけど、助からない場合は哲夫食べていーい?」
考え込む鴨川。
「……お墓に入れる為に骨を残してくれるなら」
「骨は美味しくないから食べないよ?…よし!本人に事前承諾は得た」
お茶碗と箸を持ったままガッツポーズをする極卒。
「そんなに嬉しそうにガッツポーズしないで下さい…」
鴨川はため息を一つ吐くと、出勤する支度を始めた。