保管倉庫
□隈とクマ?
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トントン
支部長室の扉がノックされると共に、哲夫の声が聞こえた。
「兄さぁん…」
弱々しい声である。
「入っていいぞ」
ドアが開くと…
「明日までに本部へ提出する書類、書き終わりましたぁ……」
「…お、お疲れ様」
髪はボサボサ、目の下に隈が出来ている哲夫が書類を持って入ってきた。
「お前…いつ家に帰った?」
「えーっと……二日、前?寝ずに書類製作してましたぁ」
そう言うと、哲夫は拓也に書類を手渡す。
「大丈夫か?とにかく、座れ」
拓也は受け取った書類をデスクの上へ置きながら立ち上がり、今まで自分が座っていた椅子に座る様に促す。
「はぁい…」
拓也に促されるままに椅子に座り、そのままデスクに突っ伏す哲夫。
「つ、疲れました…」
部屋の隅にあるポットなどが置いてある棚の所へ行った拓也は、カップにインスタントコーヒーの粉を入れながら聞く。
「哲夫、お前もコーヒー飲むか?」
「…お願いしまぁす…」
「…分かった(哲夫の奴、相当疲れてるな…)」
哲夫の分のコーヒーを入れている最中、拓也はふと子供の頃のとある出来事を思い出した―――。
―――――――――――
母親に哲夫を寝かし付けてくれと頼まれた、拓也(当時12歳)。
時間は夜の9時を過ぎていた。
「哲夫ー、明日も幼稚園あるんだから早く寝ろよー」
「だいじょうぶだよ、ぼくちゃんとおきれるもん!」
布団の上で絵本を何冊か広げている哲夫(当時5歳)。
「駄目なものはダーメ」
そう言って、拓也は絵本を片付けた。
「…むぅ〜」
ほっぺたを膨らませる哲夫。