保管倉庫
□始まりは雷と暗闇と共に
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季節は夏。時計は5時を知らせている。
夏至を過ぎて日は少しづつ短くなってはきているが、まだ外は明るい…筈だったのだが。
急に空は灰色の雲に覆われ、降りだした大粒の雨と一緒に雷光が走る。派手な音を響かせて。
この季節に良く起こる、夕立だ。
「ひゃぁっ!!」
突然の雷に怯え、思わずその場にしゃがみこむ私の弟、哲夫。
片付ける為に床から拾い集めていた資料は、また床へと舞い落ちた。
「…本当に、雷が苦手だな。お前は」
「…あと、停電と暗闇が苦手ですぅ…」
少し涙目になりながら答える哲夫。
「夕立がおさまるまで、窓無し防音加工されてる部屋にでも避難してこい」
「で、でも…」
また雷が踊る。
「ぎゃ〜っ!!」
ぎゅっと目を瞑り、必死に耳を塞ぐ哲夫。
「…はぁ」
私は溜め息をついた。
丁度手元にあった紙にペンで文を書き、哲夫の肩を叩く。
恐る恐る目を開けた哲夫にその紙を見せた。
[いいからさっさと行ってこい。夕立がおさまったら呼び戻しにいってやる]
それをみた哲夫は、コクコク頷いて足早に部屋を出ていった。
「…やれやれ」
また雷が鳴る。
ちゃんと閉まりきっていない扉からは、微かに哲夫の悲鳴が聞こえた。