□猫と私と青空と
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道の端っこ。誰も見向きもしない狭い路地裏。その奥の、行き止まり。
そこに座り込んで涙を流す私の横を、素知らぬ顔で黒猫が通り過ぎていった。

その黒い毛の塊は私の視界の右端で、尻尾をゆっくり二度左右に振ると、金色の瞳を空に向けて、短く一度「にゃあ」と鳴いた。


「あなたは一体、どこへ行くの?」


問い掛けた私の言葉に答えは返さず、黒猫は行ってしまった。


また、一人。 私、だけ。


一旦止まった涙が、再び流れ始めた。
悲しみは、とうの昔に忘れたはずなのに。
この虚無感は、何故だろう。
期待通りにいかなかったからか、何なのか。
この広い世界に一人ぼっちで置き去りにされてしまったような、空虚な気持ちが、胸一杯に、広がり満ちていく。


私は今、どこにいるのだろう。



「ねぇ。」

青い空に向かって、問い掛ける。

頬を伝い、流れる涙は拭わない。どうせ、誰も見ていない、誰も気付かない。


「私は、ちゃんと、ここにいる?」

返事は、無い。
涙が止まら無い。


「私は、生きてて、大丈夫?」
「にゃあ」

返事が、あった。
黒猫が、いた。


「あなた、どうして戻ってきたの?」
「にゃあ」


ふわり。と軽やかな足取りで、黒猫は私のヒザの上に乗った。


「わ……ぁ」

ふわふわで、もこもこしてて、あったかくて。

「にゃー」


私の身体に触れる毛が、肉球が、舌が、温かさが、私が今ここにいると、教えてくれる。


「あ、あは。あはは、くすぐったいよ」

「にゃ、う」

「あははっ。はははっ!」


答えを、見つけた。
私は、ここにいる、し、生きていたいから、生き続ける。


いつの間にか、涙は止まっていた。



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猫飼いたくてしかたがない。
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2009*06*21
 

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