「好きよ、ティキ…愛してるの」
愛の言葉の筈なのに、お前の顔は酷く哀しみに歪んでいた。
「俺も…こんなにもお前が愛しいよ」
抱き締めるお前の小さな身体は震えていて。
いや、それは俺も同じだった。
お前を抱き締めた手はガタガタと震えていて、まるで寒さに凍えているかのようだった。
自然と触れ合った互いの唇は、何故か遠慮がちに。
そしてやはり微かに震えていた。
それは多分。
別れが近いのを互いが知っていたのかもしれない。
しっかりと腕の中に抱きしめていたお前の体温はいつの間にかなくなり、気付けは儚く笑む姿はもう遠く。
微かに動く唇は別れを告げる言葉。
微笑むお前の頬に伝う涙は、今はもう昔の残像か。
今はその頬から血を流し、苦痛に顔を歪めるお前が目の前にいる。
「勇ましくなったな」
「ティキは相変わらずなのね」
互いに攻撃を繰り返すなかでの会話はもう、いつかの恋人ではない。
それぞれの宿命を背負った俺とお前は、あの時別れを誓ったんだ。
今さら。
なんて都合のいい言葉はお前にはないのだろうか。
でも俺は。
「またあの時のように幸せになりたいよ」
願えば願うほど、遠退く願望。
戦争に恋路なんて似合わない。
それを教えてくれたのはお前だ。
再びお前を抱き締める時は、二度と訪れないのだろうか。
end…