はなし

□しあわせ
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その夢を優しい夢だというのか残酷な夢だと言うのかはきっと人によるんだろう。

そんな曖昧な夢。












真っ暗なところに立っていた。まるで宇宙みたいにどこを見ても暗くて、でも立っているという感覚と何時もの制服を着ている事ははっきりと分かった。

そこが夢だとはっきり分かるというのは珍しくて、でも何もないのが寂しくて、ただ立ち尽くしていた。





「刹那?」



後ろから、声が聞こえた。
同じ声なのだけれど、あいつとは違い感情が込められているような、懐かしい、でも同じ声。


「…ロックオン?」



振り返ると、驚いたような、でも嬉しそうな表情をした、四年前に隣りにいたロックオンが立っていた。


ゆっくりと近付いても消えない。

頬に触れても消えない。

抱き付いても消えない。温かい。


「刹那…だよな?なんかでかいけど」

「そうだ」

「随分と積極的、だな」


「そうか」

「あぁ、その素っ気なさはやっぱ刹那だ」



くすくすと笑うロックオンが気に食わなくて、足を思い切り踏んづけてもまだ笑っている。


「もしかして、あー、未来の刹那とかだったりする?」

「…そうかも知れない」

「まぁ夢だしな、なんでもいいか」

「………」


ぎゅう、とロックオンの首にまわしていた腕に力を込めた。言いたくない。言いたくない。


「そんなに締めなさんな。窒息しちまう」

「……知らない」

「駄々っ子じゃねぇんだからほら」


ポンポンと腕を叩かれて、ロックオンの肩に押しつけていた顔を上げると、しあわせそうに細められた眼が見えた。


「大きくなったな」

「…あんたに追いついてない」

「ははっ、こんだけ伸びりゃあ大したもんだよ。それに美人になっちまってまあ」


今度はロックオンの手が俺の頬に触れて、あの頃のように撫でる。

目元に触れる。

「眼は、変わらないな」

顎のラインをなぞる。

「大人っぽくなった、」

唇をなぞる。

「あんたにキス出来るようになった」

次にどうなるかなんて予想していたから、ロックオンにキスされる前に俺から唇を寄せた。




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