はなし

絶対などないと言うならば、今僕を愛してください
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目を開けた途端に視界一杯に広がる赤。


朝起きて最初に見るのが薔薇だなんて、そんな馬鹿馬鹿しい事を思い付きなおかつ実行できる人間を俺は一人しか知らない。



「…グラハム」


こんもりとした赤の向こう側に金色がちらりと見えた。

たしか昨日は…珍しく二人とも休みだから、(俺はミッションが地上なだけだったりするが)グラハムの家でゆっくり過ごそう、という話しになって。
で、来てみたら仕事が長引いているようで家主がいなくて…


「…朝方まで待って、寝ちまったかな」


3時頃に時計を見た記憶があるから、グラハムはそれより遅く帰って来たのだろう。

それなのにわざわざ薔薇を買ってくるとは。


苦笑しつつベッドから抜け出した。
薔薇を挟んで向かい合うようにベッドには入らずに寄り掛かって座り、頭を伏せて寝ている謎は起きてから訊こう。

肩に毛布をかけてやってからキッチンにむかい、時間的にブランチかな、とサンドウィッチを作るべくエプロンを身に着けた。







「おはよう、ロックオン」

「おそようさん」


欠伸まじりにリビングに入った彼にからかいながら言ってやると、
「起きたらやはりおはようだろう」
と真面目に返され、あまりに予想通りで思わず吹き出してしまった。むこうはただきょとんとしているが。



「まったく…変わりないみたいだな」

「君も相変わらず綺麗だ」



ぐ、と近付いたかと思うと頬にキスされ、久し振りなせいか恥ずかしく顔が熱くなる。



「本当なら君が目を覚ました瞬間にキスをしたかったのだが…」

「…俺が起きるの待つつもりだったのか?」

「あぁ。驚く顔をみたいと思ってね。寝顔につられて私まで寝てしまったが」

「おまっ、俺の顔見るためにベッド入んなかったのか!?」

「堪能させてもらったよ」



笑顔は爽やかなのに、言ってる事は結構すごい。

このようなやりとりも久しぶりなせいで、免疫が消えてしまったんじゃないだろか。
やたらと恥ずかしい。



「あー!
ほら、メシ食うぞ!」


ぱたぱたと顔を扇ぎながらせかし、コーヒーのカップを押し付けた。








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