はなし

□波蝕
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ジャキ、ジャキ、心地いい音が直ぐ後ろから聞こえる。

時折はらはらと癖の強い髪が視界の隅を通り過ぎ、波にさらわれていく。

頭を固定されているためそれくらいしか見るものもないので、じっと波を見つめた。



どうだ?進んでるか、とロックオンが浜辺に声をかけたようだ。まだかかりそうです、アレルヤの苦笑いしているような返答。ティエリアがまだ計りから離れないんだろう。

ロックオンは昼食が遅れるのが嬉しいんだろうか。さっきよりも楽しそうに休めていた手をまた動かし始めた。


「…髪切るの、好きなのか?」



暇なのもありきいてみれば、一瞬手が止まった。


「珍しいなー、刹那から声かけてくるなんて」

「……暇だ」

「わかったわかった、急ぐからな」




宣言通りに切るペースが少し早くなった。



「そンでもいい傾向だ、前より穏やかになったんじゃないか?」

「…そうか」

「その調子で体も成長すればいいな」

「ほっとけ」





俺は変わった、のだろうか。

だとしたらそれはいいことなのだろうか。

このような事を想う、それが生きているということ、だろうか。





…浜辺から何かを蹴るような音と短い悲鳴が聞こえ、真面目に考えるのをやめた。





また波をぼーっと見ていると、裸足の足が視界に入った。



「ほら、あと前髪だけだから上向け」

「…ん」



ロックオンの手が前髪を摘む様子を観察していると、何故だか「お前なぁ…」と呆れたような声がした。







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