はなし

□ずうっと息を潜めてきみを愛したいのだ
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体の大きさと比例した小さな枕を抱えて部屋に静かに入ってきた小さなパジャマを着た小さな少年は、乱暴にドアを閉めると素早く俺のベッドに近づいて体を滑り込ませた。触れないような距離を保って枕をセッティングし、一息つくとすぐに寝る体勢に入る。なんせバカデカいベッドなので、俺が中央で大の字になって寝ようともリボーンがあと四人は寝れるだろうスペースがある。よいしょよいしょとリボーンのせいで冷えた空間まで、要は触らないギリギリの場所まで匍匐前進で近づき、無言で背中を見せるリボーンに背中を向けて落ち着いた。
もぞもぞと枕からずり落ちて毛布に埋まった頭からおいツナ、ととがめるようなか細い声が聞こえたが適当に謝って誤魔化した。

仕事が終わって一眠りはしたから、ええと、今は三時ぐらいか。よしまだまだ寝る時間はある。よし寝よう。


「ツナ」


ああそんな気はしてたよ!リボーンが部屋にパジャマでくるなんて正直言って空から豆腐が降ってくるくらいにあり得ないことだよ!日本食恋しいじゃなくて何があったのかびくびくです。中学生の頃よりは分かり合えた気がしているけど一方的だったら悲しい事だし。ともかくこのまま穏やかに眠れる気はしてはいなかった。願望としてはおやすみなさい良い夢を!で寝たかったのだけども。
よっこいせと寝返りをうちうっすら見えるシルエットになんだよ、と声をかければ、小さく嫌な夢をみた、と返答があった。


「ママンを撃つ夢をみた」


ああ、そうか。
蚊のような小さな小さな声が言った内容がストンと胸に落ちる。
いくらリボーンでも、愛人が何人いようと悪夢をみれば怖くなる。大切な人をなくしたと思えばとても悲しくなる。ひとりじゃ寂しくなる。
そっか、そっかあ。
腕をそうっと伸ばして無言の背中にずるっと乗せる。びくりとリボーンの体が一度跳ねたが退かされはしなかったので、指を広げて出来るだけ体温が伝わりやすいようにし「おやすみ」と一声だけ掛けて目を瞑る。筋肉が硬直しているのが少しずつゆるまっていって、深い静かな呼吸に揺れるのを待って息をついた。無駄にデカい手のひらでよかった。
子どもなのだ。大人びていれば放っておいていいはずがない、俺だってこんな立場だけど大人になんて為れた気がしていない。
リボーンが来る直前まで寝ていたので温まった手でよかった。少しでも安心して眠れるように。温かい夢をみれるように。
ずうっと息を潜めてきみを愛したいのだ
いつになく深く呼吸をする。
覚えのある夢をまたみないように。あの嫌悪感をこの子どもがもう二度とあじあわずに済むように。



11.04.17


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