はなし2

□幸せならなんでもいいと思う
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三月の初めは、結晶のくっきりとした雪が降る。

何故か、だとかそれがどうした、と聞かれても専門外の私にはどうしようもないが、とにかく空ばかり眺めていてそんな発見をした。とても美しい六花の結晶だ。
この前にその発見を友人に告げると「はいはい」と受け流されるばかりで、些か傷付いた事を思い出し不快になる。まぁ理不尽な気もするが、彼が悪い。あんなにも美しいものを見もしないのだから。

彼だったら、笑いながらしっかりと聞いてくれるだろうに。
彼は今どうしているんだろうか。

もう何年も会っていない片思いの彼をまた思い、雪がちらつく空を見上げた。





「グラハム?」


脳内で思い描いた彼の声が鼓膜を揺さぶり、反射神経のみで振り返ったのではないかという程に意識とは別に眼が動き、彼の姿を探す。
彼は、公園の入口に呆然と立っていた。


「お前、こんなとこでなにして」

「ニール!」


一時間ほど世話になったベンチから立ち上がり、彼のもとへと走り寄った。
ニールは驚きに固まったまま動けずにいるようだ。そんな様子も愛しくて思わず抱き付けば、やっと我に返ったらしくぎゃあ、などと声を上げるのが聞こえた。


「おま、もういい歳なんだからこういうスキンシップは…」

「無理だ!衝動には逆らわないことにしている!」

「少しは気を使いなさい!」


ばしりと頭を叩かれるやり取りも懐かしく、胸が暖かくなる。しばらく感じなかったぬくもりだ。やはり、彼が愛しい。


「ニール、愛して「あああああ!俺ん家近いから行くぞ!」


ぺちりと痛くない絶妙な力加減で口を塞がれ、その体勢のままズルズルと腕を引きずられて近くのマンションへと入る。慣れた様子でセキュリティを解除する姿から住み慣れているのがうかがえて、運に任せ電車を乗り継いでここにきた自分の直感力をひとり讃えたのだった。




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