はなし2

□たとえば僕が血のような色をしていたら
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※D/OGSパラレル。色々注意ですよ!













男の亜人を綺麗だと思うのは、はじめてだった。
今まで亜人を見る機会が多くあったとは言えないが、職業柄一般以上だとは思っている。その中に彼と同じように獣の耳を持つ者はちらほらと見掛けはしたが、どれもが女だった。

ただ、綺麗だと思った。





「どうした」


地下と地上の境目の、駅周辺の人目のない路地裏。
雨が降っている今、そこに座り込む人影はゴミ袋と馴染んで目立ってはいなかった。この場所では行き倒れは対して珍しいものでもない。それでも声を掛けたのは、袖からのぞく白い腕が浮上って見えたから、だろうか。

主語も指示語もない発言を自分に向けられたものだと理解したらしい人影は、組んだ腕に沈めていた頭をゆっくりと上げた。


「…なんだい、悪ガキ」


表情や雰囲気は気怠げなくせに、その口調はからかっているような妙に軽いものだ。
けれど、それ以上に意識を奪ったのは本来ならないその部位だった。


「…猫、か?」

「そ。…なんだ、これ目当てじゃないのか」

「目当て?」

「大人の事情だよ」


肌色に代わり頭の髪色と同じ色をした獣耳は、水を払うようにパタパタと動き本物なのだと分かる。
触れてみたいとは思ったが、流石に失礼だろうと思って止めた。


「お前さんこそこんな時間にどうしたんだ?子供は家で寝てる時間だろ」

「仕事だ」

「その年でか?」

「掃除屋」

「…そうか、お疲れさん」

「質問に答えていない」


先程から保留にされてしまっているらしい最初の問掛けへと意識を戻すように告げれば、ぱちりと瞬きをして黙ってしまった。ついさっきまでは鬱陶しいほどに、初対面だとは思えないほどになれなれしく話していたのに。


「…話し掛けてきたときのか?」

「………」




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