はなし2

□足りない言葉
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どうして人間には理性だけではなく感情まであるんだ。
不便で仕方がない。

感情など理解しがたい、計りがたいものないほうがいいに決まっている。

また、感情に従って動くのには理性は邪魔なだけだ。無駄なプライドしかり。



「というわけでなんで人間には理性と感情が両方あるの?おばさん」

「途中までは可愛かったのに最後ので台無しだよ美鶴くん。ていうか小学生らしくねぇなほんと」

「なんだ、口調はらしくしてやっただろ」

「………」

「で、なんでだ?」



高圧的な態度で人にものを尋ねちゃいけませんって、習わなかったんだろうかこの親戚の子は(いや、普通教える必要がないのか)。
そんなことをぼんやりと考えながら、私よりちょっと下から見つめてくるキラキラした眼を見返した。

好奇心旺盛なのはとてもいいことだとは思う。が、知りたがる内容がやたらとレベルが高いのだ。もうどっかの教授あたりにでも訊けと言いたくなる程に。


そしてそれを何故か私に訊くのだから
…どうしろと?



「あのねみっつん、こういうのは先生にでも訊きましょうね」

「訊いた。
そしたら固まった後に身近な人に訊きなさいって言われた」

「何故に!」


先生、貴方は私をなんだと思ってらっしゃるのですか。
っていうか答えるの面倒だっただけだろ。


「あー…。
美鶴はなんでそれを知りたいの?」

「気になったから。
…おばさんはなんでも答えてくれるから、」



期待に満ちた眼でじっと見つめられ、人生相談的回避は諦めるべきだと悟った(どうせはぐらかしてもしつこく訊かれるだろーし)。いつも通り私の主観的意見をいうしかなさそうだ。



「何故両方あるのか。それは―――」

「それは?」

「人間だからですっ」

「…おばさんは汚い大人達とはちがうと信じていたかった」

「きゃああぁ」



あからさまに演技だと分かるように大袈裟な俯き方をした美鶴だが、私はそういう反応に弱いというかなんというか…。









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