はなし2
□9.10
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彼が常に外さないようにしている手袋をそっと外し、手の甲に唇を落した。
くすぐったいのかピクリと指が反応してやけに官能的に目に映る。
白くて甘そうな指を口に含むとやはり甘かった。
「…、おいおい。そんなに嬉しいのか?」
顔がにやけてるぞ、といつもの調子の声が上から降ってくる。「君に関する事には何も隠せなくなってしまうのだ」とでも言ったら盛大に照れるだろうか。
隠されているものはやたらと気になるものだ、特に愛しい者に関わる事だと尚更。
いつものように過ごしていてふと今日が私の誕生日だと気付き(忙しくて忘れていたのであって他意はない!)、それを彼に告げると私以上の落胆を見せてくれた。
「前々から言ってくれりゃあ準備とかできたのに、あんたは…」
「私だってニールがどんなことをしてくれるのか知りたかった…」
二人同時に溜息を吐き、それに彼がくすくすと笑い出す。
「まぁ、今からでも出来ることはあるだろ」
「君がそう言うのなら最高の誕生日は約束されたようなものだな、ニール」
ニールの言葉に正直な気持ちを表すと、「はいはい」と流しつつも頬がすこし赤く染まっていた。やはり彼が居てくれるだけで今までで一番の日に思える、と訂正しよう。
「プレゼントどうすっかなぁ…」
むぅ、と顎に手を添えて考えてくれる彼をなんとなしに見ていると、普段は気にならない皮の手袋がやたらと気になってしまった。
何故何時もつけているのかは訊いたことがない。なんだか失礼にあたるような雰囲気を醸し出しているのだ、それは。
だがやはりもとから色が白い彼だ、形からして綺麗な手をしているのだろうな。
そんなことを考えながら手を眺めていると、その手がだんだんと近付いてきてついには鼻の頂上をつつかれた。
「……何をするんだい、ニール」
「グラハムこそなーに見てんだよ」
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