はなし2

□僕がどんなに
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「…なんか甘い匂いがする」



談話室に降りてくるなり本物の犬のように匂いをかぎながら、シリウスが僕を後ろから抱き締めてきた。ソファで本を読んでいた僕の首は必然的に絞まり、息が苦しい。


「シリウス…くび…!」

「ん〜…」


ぺしぺし腕を叩きながら訴えるも、上の空で鼻をすんすん鳴らしている。



「ん〜?」

「犬じゃないんだから、ほら!」


叩いたくらいでは退きそうにない。ならばと腕を掴んでグイッと引っ張ると、ぎゃうとかそんな声を上げながら寄り掛かってきて、無事に首が解放された。

呼吸が楽になったのはいい。いいのだが。



「…何?」

「ん〜」


今度はぐいぐいと鼻を僕のうなじ辺りに直接押し付けながら匂いを嗅ぎ出した。



「…リーマスのうなじ、なんか良い匂いすんな」

「何言ってんの」



それじゃ本当に犬と一緒じゃないか。
はあっと比較的軽めの溜息が口からこぼれた。


「シリウスやめてクロって呼ぶよ」

「くろ…?」

「ニッポンで代表的な犬の名前」


「俺は犬じゃねぇ!」

「何言ってるんだい。君は犬だろう?」

「犬だけど…ってあー!」



くっつきっぱなしだった鼻が離れたかと思えばぐでっとソファを滑り、クッションを轢きつつ前にきた。半ば自棄の『狼らしくねぇからって!』というギリギリの文句付きで(人を指差しちゃいけませんって習わなかったっけ)。


彼らは僕が今まで避けていたものを避けない。むしろわざととしか思えないような発言さえたまにあるくらいだ(上参照!)。嬉しいのもある反面、はらはらするからやめて欲しいのもあり複雑だ。いたずら好きな友達でこんなに苦労するとは。



「…やっぱ俺、犬でいいよ」


うんうん唸っていたと思ったら急にニヤリとしながらそう言った。
怪しい。かなり怪しい。


「俺が犬なら、飼い主はリーマスだろうな」

「ジェームズでもいいんじゃないかな」

「いや、リーマスがいい!
リーマスに遊んでもらいてぇしな」

「遊ぶって…うわたっ」



にっこにっこと笑いつつシリウスは僕の腹部目掛けてタックルしてきた。






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