はなし2
□苺
1ページ/2ページ
ぷす、と一口で食べるのに丁度良い大きさに栽培された苺にフォークを突き刺し、向かいに座っている男へと差し出す。
男はいそいそと苺のヘタをとると「どーぞ」と食べるように促す。
俺はそれを口に運ぶ。
さっきからこれの繰り返しだ。
「ティエリア、お土産買ってきたよ!」
個室で静かに情報収集していたというのに、この男は。
「アレルヤ・ハプティズム、データの解析が途中なのだが」
「ティエリアがこっち向いてくれないからだよ」
そう言って男は俺から取り上げた端末を脇に退くと、皿に盛った苺をテーブルの真ん中に置いた(データはきっちり保存していた)。
「……今回は苺か」
「今が一番甘いんだって。色も綺麗だろう?」
誇らしげにそう言ってはいるが、店員の受け売りだろうことは察しがつく。
薦められて断れなかったことも。
「他の奴らに食わせればいいだろう」
「刹那達の所にはもう置いてきたよ」
「…いくつ買った?」
「えっと、2箱?」
何故疑問系。何故そんなに買った。
表情で伝わったのだろう。「安かったからつい」と主婦のような言い訳を呟いている。
「…食べてくれる?」
「腐ったらもったいないからな。
…ヘタをとるのが面倒だ」
皿に添えられたフォークで苺を差し出すと、表情を緩めながら手を伸ばした。
―――そして冒頭に至る。
→