はなし2

□バレンタイン
1ページ/1ページ


日本における乙女の一大イベント、バレンタイン。

私の決戦は放課後


…のつもりだった





「木村の馬鹿野郎ォ!」

「……」

「やっぱり年下がいいのかっ!普段女子と話さないくせにヘラヘラして!」

「はあ〜…」

「あんなに嬉しそうなんじゃ、渡す前に失恋決定じゃボケぇ!」

「あ、チョコあるのか?」

「そこ食いつかないで下さい美鶴さん」



私の片思いの彼・木村は、帰るのが遅いらしい。いつも人がいなくなったころに下校している、との情報だった。

なので、彼が帰る頃を見計らって渡そうとしたら…一歩どころか百歩ほど遅かったようだ。
上記のような場面を目撃してしまった。


ヤケになってその辺で見かけた美鶴を無理矢理空き教室につれこんで今に至る。





「失恋しちゃったよ美鶴、チョコあげるから慰めろ」

「命令かよ。
…仕方ないな、チョコのためだからな」

「チョコ効果絶大だなおい」







「はい、元本命チョコ」

「食いにくいから」



愛情たっぷり手作りチョコを美鶴に手渡す。



…ラッピングが目の前でほどかれると涙が出てきた…



「……うぅ〜」

「泣くな、ほら美味しいからこれ食べて元気だしなさい」

「これ自分が作ったやつですが」



涙は女の武器って本当らしい。あのクールビューティ美鶴が焦っている。



「木村なんてあれだ、普段下ネタばっか言ってるような奴だ。付き合わなくて正解だって」

「あいつを悪くいうなぁ〜…」

「(しまった、逆効果だったか)」



こんなに泣くのなんて久しぶりだ。しかも学校で泣くなんてのは初めてかも。



「ああもう泣くなって。落ち着いて食えないだろ」

「ここにきてもチョコかっ」




美鶴は「あ〜」だの「う〜」だの唸ったあと、座り込んだ私の前にしゃがんで制服の袖で私の頬をゴシゴシ拭った。



「…あり…がと」

「ん」



そいつは眼を合わせて微笑んでからまた椅子に座った。




「あ、来年は生チョコ食いたい。」

「……あ?」

「出来れば本命で。」

「………え、告白?」

「さあ?
……ご馳走様。もう暗いし途中まで送る」

「うぉ、!?」



鞄と私をひっつかみ、強引に引きずって帰ろうとする彼は私の混乱をよそに上機嫌でした。







Happy バレンタイン!
















どうせなら他人への愛情じゃなく、俺宛ての愛情を食いたいんだよ、鈍感。







08.2.17

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ