はなし3

□待惚け
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帽子屋 ティエ
ねむりん 刹






『それ』はいつものことといえばいつものことなのだが、だからこそ解決に導けないでいた問題だ。



「眠りネズミ、君はこのお茶会に相応しくない」

「………」

「ここは紅茶を飲み菓子を評価する場だ。君は寝てばかりでどちらにも当てはまっていないじゃないか」

「…たまに食ってい、…る…」

「たまにでは評価など出来ないだろう。そして話しながら寝るな」


眠りネズミのぴょんぴょんと勝手にはねるくせっ毛頭をひっぱたいたが無反応。どうやらテーブルに伏せた状態のまま、本格的に夢の世界に旅立ったようだ。


「話しの途中で寝るな!」


耳元で思いっきり叫ぶと、眠りネズミはビクッと飛び上がりついでにシュークリームの山が雪崩を起こす。


「…何をする」

「君が悪い」


眠りネズミはムッとしながらも、崩れたシューをひょいひょいと口に運んだ。


「君は寝る為にここにいるのだろうな」

「ひひゃふ、ひぃえふぃあははみひひゃるふはふは」


常々疑問に(そして不満に)思っていたことを口にすると、かろうじて否定ととれる声が上がった。


「なにが違う、だ。いつもいつも俺の言う事も聞かずに寝るか食うかしかしていないだろう。その様なものを、君はお茶会だと言えるのか?」

「…これ、うまいな」

「当たり前だ。俺が選んだんだから。アリスに不味いものを食べさせる訳にはいかない」



お茶会はアリスの為に。俺達の存在もアリスの為。

なのにアリスはなかなか来てくれない。来ないのはアリスが幸せな証拠だから喜ぶべきこと。

でも、


「寂しいな」


俺の気持ちを代弁するかのようなタイミングで眠りネズミがぽそりと言った。


「…俺達が寂しがってはいけない。アリスにとってはこの方がいいんだから」

「…ティエリアは?」


今度はクッキーに手をつけながら眠りネズミはこちらを見つめながらそう言った。寂しくないのか、と問うているのだろう。


「君は俺を馬鹿にしているのか」


喉にクッキーを詰まらせたらしい眠りネズミに紅茶を渡しながら答えた。

この俺が寂しいなどと口に出す訳がない。

それを分かってやっているのだろう、こいつは。



「俺がいてやる」


くすりともせずに仏頂面で、この男前発言。
寂しいと俺は言っていない。
ただ、何故眠りネズミが俺に構うのか、それは知りたいと思っていた。

一緒に居たくて居てくれているらしい。



「なかなか頼もしいな、刹那。
アリスがくるまでの暇つぶしくらいな…」



空へと向けていた視線を眠りネズミに合わせると、そいつはカップを倒してテーブルクロスに染みを作りつつ惚けた顔をして眠っていた。



「……起きろ!
誰が片付けると思っている!?」











08.10.09
ひすてりっくと唯我独尊っ


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