はなし3

□疑似メルヘン
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その夢のなかでは私は猛獣使いで、猛獣使いのはずなのに相棒は三十センチくらいのカメレオンだった。かわいい、だがとてつもなく頼りない。
相棒のオカメを肩に乗せて街を歩いていると、RPGみたいなトカゲや猫や犬っぽい人たちも市場を開いていて、私は安くて面白いものを探して屋台を見て回る。そのうち小さい子たちにねだられて噴水前で曲芸をして、拍手喝采を浴びて気持ち良く居酒屋に入る。いや、呑めないんだけどね。美味しい肉料理があるって聞いたんだもの、行きたいじゃない。


「おう、カメレオン使いのお嬢さんじゃねえか!」

「えへへ、先ほどはご声援ありがとうございます」

「せっかくだ、一緒に飲むぞ!おごってやるからこっち来な!」


店に入るとお金をくれたお腹の立派なおじさまがいて、隣に座ると豪快に肉料理を頼んでいく。

おじさまは行商人で、大きな仕事が終わったばかりでお財布が豊かなんだそうで上機嫌だ。雇っていた用心棒や店に居合わせた客にまで料理を振る舞って、酔った勢いで景気のいい街と危ない街の話やら武勇伝やらとちょっと危うい情報まで教えてくれた。お酒の力、恐るべし。


「そういやな、この近くに現れては消える塔があるんだと」

「消える?じゃあ行けないの?」

「いや、偶然見つけた奴が入り口までは行ったらしいんだ。ところがでっかい扉には鍵が掛かってたんだかびくともしねえで、声をかけてもうんともすんとも言わねぇ。諦めて帰る途中で振り向くと、ただの草っ原になってたってよ」

「ほああ……」

「ただな、とてつもなく綺麗なんだそうだ。まるで女神様の住まう場所みてえにきらきらしててな」

「行きたい!」

「言うと思ったぜ。ほら、地図。そのかわり儲かりそうな気配があったら教えに来な」


とても人の悪い笑顔のおじさまは、この話を始めたの自体がこれ目的だったらしい。暇そうな奴に塔を調べさせて利用する、と。儲かってる商人さんは大抵怖い。



「まあ、地図っつってもここから遠くねえんだけどな」

「どれぐらいですか?」

「歩いて半日だ。馬なら今からでも日暮れまでに着くぜ」

「よし行ってきます」

「いやいや冗談だ……っておい!」


ごちそうさまでした!と叫んで歩きながら地図を開く。確かに近い。これなら本気を出せば今日中に往復もできそうだ、いざとなったら野宿でもいいし。厩に預けていた馬もとい馬っぽいニッキーを回収し、颯爽と……まではいかないがとりあえずニッキーにまたがった。オカメを足の間に安置し、街の外れまでは歩いて門を越えてからは駆け足で地図の場所まで向かう。
何故か分からないけど出来るだけ速く、飛んででも行きたいほどわくわくする。いや、わくわくというよりそわそわとかぞわぞわ?何でもいい。塔が現れてるのかも分からないけど、とにかくニッキーを急がせた。幸い道は単純だ。森が見えるまでは道なりにまっすぐ、よく道に迷う私でも大丈夫だろう。

速く、速く、急がないと、




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