はなし2
□粉砂糖で前が見えないわ
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粉砂糖で前が見えないわ
今朝の星座占いはとっても残念な結果だったので、ラッキーカラー以外の情報は頭から締め出してしまう。そうこうするうちに時間が経つのが朝というものだから無駄なく動いて考えなければ遅刻してしまうのだ。
ピンクと紫…、ああ残念髪ゴムは黄色とかばっかりだ。最下位としては心許無いけれど、ピンクのケータイだけ掴んで家を出ることにする。
「ミレイナ、忘れ物ない?」
「大丈夫ですよ、多少の物は借りられます!」
「そうね。気をつけていってらっしゃい」
「いってきますです!」
玄関まで見送ってくれるママにきっちり敬礼し、スニーカーの踵を潰さずに家を出る。中学までは歩いて20分。今日はちゃんと余裕をもってのんびり歩く。友達も先輩もお隣りのミケも見落とさないくらい。ミケの首輪は紫色だったはずだから、学校に着く前に是非とも撫でておきたいものだ。
高くて日当たりのいい塀の上をじぃっと見ながら歩いていると、ピンク色のふわふわしたものが塀の穴に詰まっているのを見つけた。
あ、ラッキーカラーだ。
思わず手を伸ばして引きずり出すと、なにやら人形の服のようだった。ふわふわな小さいカーディガン。かわいい。
「おい」
こんなにかわいいのだから幸せを運んでくれるに違いない。指先でそっと畳んでカバンの内ポケットにしまう。ミケ以上の収穫である。
「おいそこのツインテール」
「はい?」
チクリとした右耳に反応して振り返ると、とっても綺麗な小さい人がのぞき込むようにこちらを見ていた。綺麗なサラサラの紫色の髪が首を傾げるのに合わせて動いて、妖精さんはちっちゃな口を開いた。
「そのカーディガンは僕のものだ。とってくれた事には礼をいうが、早く寄越し「ああぁ我慢できませんかわいすぎです!」
意外と低い、男の子の声がその妖精さんから出たのには驚いたけれどそれがまた可愛くてつい手で掴んで顔を良く見ようとわたしの顔の正面に持って来た。
妖精さんはぐあうだとかぎゃうだとか悲鳴を上げていて可哀相だったけどやっぱり可愛い。ちっちゃい!綺麗!しかも紫色の綺麗な髪!耳同様にチクチクと抓られていたいけれど、可愛いのっまったく苦にならない。ちっちゃいおじさんも可愛かったけどこの妖精さんは格別だ。逃がしちゃあもったいない!
「妖精さん、今お暇ですか?」
「いいから離せ愚民が!」
「実はミレイナ今から学校なんです。遅刻しそうなんです。でも妖精さんとお話ししたいので、」
「なにを言って「えい」
可愛さについ出てしまう笑顔を妖精さんに向けて(妖精さんはキュッと眉間に皺を寄せていた、もったいない)手首に巻いていたシュシュでぐるぐる巻きにして鞄に入れた。ちょっと可哀相だけれどこのままでは本当に遅刻してしまう。
なんだかほっこりする気持ちのまま、できるだけ鞄を揺らさないようにして学校に走った。
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