原作設定
□手作りの愛
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目の前には見慣れたドア。
マルクト軍本部内にて、ルークはなかなかその場から動けずにいた。
手には白い小箱。
深緑色の細いリボンでラッピングされているそれは誰が見ても贈り物だ。
普段はノックもせずにずかずかと入るが、なんとなく今日はそんな気分にもなれない。
(なんでこんなに緊張してんだろ、俺)
ドア――ジェイドの執務室前でルークは溜め息をついた。
昨夜、夕食を食べ終わり、宿屋の自室に戻る途中でアニスに話かけられたのが事の始まりだ。
「ルーク!明日は何の日か知ってる〜?」
「何かあるのか?」
「やっぱり知らないのかぁ〜。明日は、好きな人にチョコを贈る日なんだよ。これから作るんだけどルークもやってみない?」
「…え、何で俺が」
「大佐に渡したいでしょ〜?」
「なっ…!」
ぐふふとニヤついた笑みを浮かべるアニスに引きずられ、結局チョコを作ることになってしまった。
アルコールを効かせたビタートリュフチョコ。
これならジェイドでも食べれるだろうとアニスが考えてくれたのだが…。
(ジェイドってそういう行事興味なさそうだよな)
そもそも贈り物をしたことが無かったため気恥ずかしい。
しかし折角作った(勿論何度も失敗した)ので渡さなければ意味が無い。
(…よし…!)
―コンコン
意を決してドアをノックするも返事は無かった。
「うわ、いないのか…」
俺の悩んだ時間を返せとボヤきながら、取っ手に手をかけるとドアはすんなり開いた。
鍵がかかっていないということはすぐに戻って来るはずだと憶測し、執務室に入る。
「…なんだよ、これ…」
やはりジェイドは居なかったが、机に置かれた大量のチョコに愕然とした。
全部ジェイドへのものだろう。
やたら高そうなチャコが積み重なっている。
中にはチョコだけではなく手紙やら大きな荷物(恐らくプレゼントだろう)が混ざっていた。
(なんだ…俺のなんていらないじゃん…)
自分が馬鹿みたいに思えてそのまま回れ右しようとすると、
「おや、行ってしまうんですか?」
「!」
(…いつの間に…)
ギギギとロボットのように首を回すと、ドア部分に背を預け腕を組んだまま立っているジェイドがいた。