短編小説

□だから僕は。
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覚悟はとっくにしていたのに。

キミに傷つけられた心が血を流す。

上げかけていた手を沙織の肩にかけ、少し押すと簡単に僕から離れるキミ。



「沙織」



顔をあげこちらを見つめてくる。

潤んだ瞳に心が揺らぐ。

でも負けない。

臆病者と言われてもいい。

沙織のそばにいられるのならいくらでもその地位に甘んじてみせる。

だから僕は。



「沙織。大丈夫。今は少し距離を置く時なんだと思う。冷静になればきっと彼をまだ好きなことに気付くし、彼も沙織とやり直したくなるはずだよ」



親友として最上級の励ましと笑みをキミに。

たとえこの心から血が絶えようとも。



「……茜。……うん……そう、だね。ありがと」



うっすらと目に涙が滲んでいる。

泣き虫なとこも好きだよ。

きっと一生言う事のない言葉。

飲み込まれ続ける言葉たち。

昇華されることのない想い。

それでも僕はキミを一生見守り続けたい。

キミが好きだから。






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