短編小説
□チョコの行方
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そんなに好きなんだ、その人の事。
なんだか切なくなってきた。
「……分かった。でも急だし上手く出来るかどうかは分かんないよ。それでもいいなら」
「ありがとう!やっぱ杉本さんはいい人だぁ」
本当に嬉しそうに微笑む彼女。
アタシの心は雨が降り出しそうなのに。
放課後、美樹と一緒に材料を買ってアタシの家で作る事にした。
間が良いのか悪いのか、今日は両親共に親戚の家に出かけていていない。
なんてベタな、と誰にともなく突っ込む。
「いいなぁ、綺麗な家で。うちなんてボロボロだよー」
「そんな事ないよ。あ、荷物適当に置いてくれて良いから」
台所に材料を並べる。
「はい、これ」
エプロンを手渡す。
「ありがと。何か新婚さんみたいだね♪」
「ちょっ、突然何言い出すのよ!高柳さんてそんな事言う人だっけ?」
「そうだよ?知らなかった?」
知らなかった……。
いつも姿を見るだけで会話は聞かないようにしてるから。
ほら、一応プライバシーとか、あるかなって。
「と、とにかく、チョコ作ろうっ!ねっ!」
「はーい♪」
はぁ……。
「で、どんなチョコが作りたいの?」
手を動かしながら聞く。
「んー、……可愛らしい感じかな」
美樹もアタシが教えたとおりに手を動かしながら答える。
可愛らしい、か……。
「高柳さんはその人の事が凄く好きなんだね。顔が緩んでるよ」
なるべく普通に言いたかったのにちょっと冷たくなっちゃったかも。
「うん。凄く好き。こんなに好きになったのは初めてなんだ。だから上手く行ったら良いなって思ってるんだけど……」
普段は綺麗な感じなんだけど、今の美樹は頬を赤く染めてとても可愛らしい。
「……大丈夫。高柳さんなら可愛いし綺麗だしきっと、ううん、絶対上手く行く。アタシが保証する」
口では応援できたけど心は……張り裂けそう。
アタシはあなたの恋人にはなれない。
やばっ泣きそうっ……。
こんなとこで泣いたら変な誤解されちゃう!
……。
良かった……なんとか落ち着いてきたかも。
美樹も気付かなかったみたい。
「ね、次はどうするの?」
「えっと、次は……」