短編小説
□足音
2ページ/2ページ
由里は今頃仕事で忙しいんだろうな……。
私は小さい頃から留守番が嫌いだった。
両親共に忙しい人で、毎日一人で夕飯を食べていた。
夜中に泥酔して帰ってくるなんてのはよくある事だった。
喧嘩してる声を聞く日も多かった。
そんな日は頭から布団を被って何か楽しい事を思い浮べた。
家を出、由里と暮らすようになっても記憶は私を離さない。
だから普段は何も考えなくて済むように、平日は昼前から夕方までバイトを入れているのだけど、昨日店長に無理やり休みにさせられ今に至るというわけで。
はぁ。
も、片付けよ。
埋めていた顔を上げ、テンションを上げるように少し勢いをつけて立ち上がる。
―――――
……コツ、コツ……
……んっ……。
コツコツ
あれ……寝ちゃってたんだ。
コツコツコツコツッ
あ……帰ってきた!
急いで玄関に向かうと何故か向こうも慌ててるみたいでなかなか開けられないみたい。
クスッ
内側から鍵を開ける。
静かにドアが開いて、会いたかった姿が現れる。
「おかえりw」
「ただいま///」
両手を広げて待つ。
何を照れてるんだかw
夕方になって少し冷えてきたのか、冷たい体を温めるように抱き締める。
「よくアタシだって分かったね?」
「当たり前♪」
そんなの簡単すぎるって。
でしょ?
了