短編小説

□チョコの行方
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今日は聖・バレンタイン・デー。



こんな日、なければ良かったのに。















『チョコの行方』















明日はチョコレート会社の陰謀渦巻くバレンタイン・デー。



女子はチョコを誰にあげるかという話で盛り上がり、男子は気が早い事にもうそわそわしだしてる。



アタシはというと、いつも通り席に座って本を読む……ふりをしながら同じクラスの美樹をちら見。



言っとくけどアタシは変態でもストーカーでもないから!……っと思う……。



ふと、視線に気付いたのかどうかは分かんないけど突然美樹がこっちに向かってきた。



な、なになに!?






「ね、杉本さん、私にチョコの作り方教えてくれない?」



「ふぇっ?!」






ビックリした。



彼女とはあまり話した事がなかったのにいきなりそんな事を言われたから。



何でアタシなんだろ。



美樹の周りにはいつも沢山の人がいるし、その中にお菓子作りが上手い人だっているかもしれないのに。



どういうつもりなんだろ。



……別に深い意味なんてないか。



ただ周りにお菓子作りが上手い人がいなかっただけとか、いつも本ばっか読んでるアタシなら作れるんじゃないかとか考えただけかもしれない。



とりあえずその頼み事を受けるかどうかなんだけど……美樹と二人きりというシチュエーションはめったにない事だから正直美味しい。



けど、手作りするという事は本命なわけで、それを貰えるのはアタシではないという事が悲しくて、思わず断ってしまった。



そんなアタシの気持ちなど知らない美樹はしつこく食い下がってくる。
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