短編小説
□足音
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あなたを好きになった時から、私は不思議な力を手に入れたんだ……。
『足音』
頬に触れる柔らかい感触で目覚める。
「行ってきます」
同時にドアが閉まる音。
コツコツコツ、コツコツ、コツ……。
遠ざかる足音を聞きながら体を起こす。
「……いってらっしゃい」
大きく伸びをし、寝癖だらけの髪を簡単に直す。
軽く朝食をすませ、窓の外を見ると雲一つない快晴。
ベランダに出てみるともう12月だと言うのに風もなく暖かい。
「いい天気だな〜。今日はバイトは……休み、か」
暇だし布団でも干そうかな。
気を紛らわせたいし。
午後、お気に入りの音楽をかけてコーヒーを飲みながら読みかけの本を読む。
……集中、できない。
時計を見るとまだ14時をすぎたばかり。
本を閉じリビングの日の当たってる所へ移動してペタンと座る。
「……早く帰ってこないかな」
膝を抱えて顔を埋める。