Short Novel
□何も言わない、君へ
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「「お帰りなさいませ、お嬢様」」
「……ただいま」
幾人かのメイドに迎えられた、ラクス。
メイドのほうは始終笑顔を保ち、ラクス無表情。荷物をメイドに手渡すと、ラクスは階段をどんどん駆け登って行った。
――――カチャ
「あ、お帰りなさーい!お姉ちゃん!」
「……み、ミーアッ?!」
ラクスは部屋に入るなり、見えた妹の顔に目を見開いた。が、直ぐにいつもの無表情に戻ると、ドアを閉めた。
「…また、わたくしの部屋に勝手に入ったのですね――」
「いいじゃなーい、…そ・れ・に!今日は、アタシと買い物に付き合ってくれる約束でしょー?ずっと待ってたのよっ」
口を尖らせて言うミーアに、ラクスはそういえば…と思い出していた。
「お姉ちゃん、忘れてたのー?!」
ラクスの様子に…もしや、と思い言えばラクスは素直に頷く。姉の少しボケッとした性格に、ミーアはプッと噴き出した。
周りからは非の打ち所がない、完璧なヒトと言われてはいるが、実際は少し抜けていて天然が入っているのだ。普段は完璧な姉が、自分の前だと素になる―――この特権はミーアだけに与えられたモノだった。
「すみません、ミーア。今、お仕度いたしますのでお待ち下さいね」
ラクスは、制服をクローゼットに仕舞うとワンピースを着た。すると、ミーアは不満げな声をあげた。
「お姉ちゃ〜ん!出掛けるんだから、もっとオシャレしなきゃっ!!」
ミーアはラクスに近づくと、髪を結ってあるゴムをとってしまった。すると、フワリとした豊かな桜色の髪があらわになった。ラクスは驚き、慌てて髪をおさえる。
「うん、可愛い!!眼鏡も外してよね!どうせ、伊達なんだからさw」
「あーうー。…ミーア」
ラクスは恥ずかしそうな顔をし、ミーアを見つめるが、ミーアはニッコリ微笑むだけだった。
○●○●○●○
街中には目立つ二人がいた。
一卵性双生児のように、そっくりな二人は男たちが振り返る。一人はお嬢風のおっとりとした雰囲気のラクスと、もう一人はスラッとした長い脚をショートパンツから覗かせ、ボーイッシュな感じのミーア。正反対な二人が揃うと、余計目だってしまう。
「ミーア。なぜ、今日はいつもと違う格好ですの?」
「んー、いつもの格好だと清楚な格好したお姉ちゃんの隣は歩けないの。下品すぎちゃうからさー。だから、今日はボーイッシュ!」
妹の服にたいしての細かい気配りに、ラクスは関心していた。買っている服は、店の人に選んでもらうのがたいていで、ミーアのように何軒も店を回らない。
「ミーア、今日はどちらへ?」
「んークラスの子に教えてもらったトコなのよー!すっごく、可愛い服がいっぱいあるんだってー」
ミーアはラクスの腕に自分のを絡ませると、優しく引っ張っていった。
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