Short Novel
□The girl who is Cinderella
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『王子は姫の手にキスをして―――そして、馬に乗せたのでした。美しい姫と、ハンサムな王子はお城で幸せに暮らしました…』
『お伽話は、本当になりますの…?』
『んー。ならないな…でも、夢ならなるよ』
『お父様には、夢がありますの?』
『ああ、お父様の夢はラクスが大きくなって大学に行って、幸せになることだ――』
『……お姫様が行く大学は?』
『あー…お姫様が行く大学は、王子様と同じところかな。でもなラクス、お伽話は素敵な王子様を見つけるだけじゃない。…夢を実現させるお話なんだ。信じるモノの為に、頑張るということなのだよ。ほら、いつも言っているだろう?“三振を恐れて”――』
『“試合から逃げるな”』
『ああ、そうだよ』
『フフッ』
『いいかい、よく覚えておくんだよ?この本にはね、お前のこれからの人生に必要な大切なモノがある』
『…?はい』
わたくしの王国は、突然の大地震で崩れ落ちてしまった。
『シーーゲルッッ!!助けてぇーー』
『…行かないでッ、お父様っ!!』
『すぐ戻ってくるよ、ラクス』
わたくしは親友を無くしてしまった。
その日から、お伽話は――本で読むだけのモノとなってしまった。
―――遺言がなかった為、継母がすべてを相続した。家も、ダイナーも。
そして、嫌々ながらも…わたくしを。
わたくしは、今までの部屋から物置になっていた屋根裏に。
―8年後―
〔ラクスー。…ちょっとラクスー……ラクスッッ!!!〕
「…っは!!」
ラクスはスピーカーから聞こえる継母…フィオナのキンキン声に、ビクッと驚き目を覚ました。昨夜はずっと勉強をしていたため、机でシャーペンを持ったままの格好で寝てしまっていた。
〔朝食の時間よー。早く持ってきて!〕
「んー…」
ラクスはまだ寝ぼける頭で頭をガシガシと掻いた。ほんの少ししか寝ていないため、まだ頭がぼんやりするのだ。
〔…ラクスッッ!!!〕
だが、スピーカーから聞こえる継母のキンキンとした叫び声にシャーペンを投げると嫌々ながらも立ち上がった。
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