Short Novel

□眠らないオヒメサマV
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眠らないオヒメサマV






―――…カポンッ



心地よい添水の音が耳朶を打ち、手入れの行き届いた庭園が目の前に広がった。


キラに連れて来られたのは、商談でよく使うような明らかに高そうな日本食屋。




高いだけあって個室になっており、部屋と部屋の間隔もかなりあいている。




時折聞こえる鑓水の音が、安らぎをあたえてくれる――――雰囲気が良い所だ。









食事も、和食をあまり知らないラクスはキラに任せ――キラは慣れたように注文を仲居に言い付けていた。運ばれて来た懐石料理料理も、色鮮やかで美しい。ラクスは箸を器用に使い食事に手をつける。ラクスの一連の動作を、キラを黙って見つめていた。






さすがに、ラクスもキラの視線に気付いたのか口元を引き攣らせながら口を開いた。








「わたくしの顔に、なにかついているのかしらー?ホホッ」




眉をぴくぴくと動かしながら、わざとらしい笑い声をあげる。キラはラクスを見つめたままにっこりと微笑んだ。






「んー?綺麗だなーと思って」



「………は」




いきなりのことに、ラクスは間の抜けた声を漏らしてしまった。口はポカーンと開いている。






「…ラクスの箸捌き、ホントに綺麗」




「……お箸のことですか――」




キラの言った言葉にラクスは小さく言葉を漏らす。てっきり口説かれてると、思ったのだろう。キラもラクスの考えていることが分かっているのか、笑いを噛み殺している。






ラクスは、恥ずかしさからゴホンと一つ咳ばらいすると言った。





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