憧憬之華
□拾肆
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《憧憬之華・拾肆》
ずっと夢に見てた。
でもそれは夢で、夢でしかなくて。
現実になることはないって解ってた。
だから余計に憎らしくなった。
彼女が傍にいないのが現実で、彼女が僕じゃない男の妻なのが現実で。
現実を思い知るから夢は嫌いで、夢にまで出てくる裏切り者の彼女が大嫌いで憎い。
夢を見るたび憎しみは増した。
憎しみと一緒に報われない想いも募った。
想いを募らせれば募らせるほどまた憎くなって、その繰り返し。
育った憎悪は面影を持つ者なら誰でも側に置きたいという狂気になった。
胸にあった憎悪は狂気に、狂気は僕を蝕んで、僕は憎悪して。
溜まった憎しみを、僕は――。
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