憧憬之華
□壱
1ページ/6ページ
《憧憬之華・壱》
「………ぁ、っ」
長い髪は寝台の上で扇情的に広がり、長い四肢は皴一つない絹を乱していく。
熱い躯を寄せ合い、逞しい腕に縋り、脚を開いて重なる男を誘う。
甘美な快感に嬌声を上げながら、女は啜り泣いた。
「あぁ…ど、うかっ、ど‥かっ、お願、い、いた、しま…ッ!」
「――何を?」
淫らに腰を揺すりながらも、しおらしく泣いて見せる女を見下ろしながら、男は耳元で尋ねた。
縋りつこうと伸ばされた腕を寝台に押し付け、涙に濡れた瞳を覗き込む。
高貴な存在である証、紫結晶の瞳に射ぬかれた女は、その美しさに息を呑み、頭に叩き込まれた使命を忘れてしまう。
ただその瞳に映るのが、自分だけであってほしいと希ってしまう。
「どう、か、ご慈‥悲を、ご、慈悲を下さいませっ」
痺れるような快感を与えられながら、嬌声混じりに告げると、男の口角が吊り上がる。
「誰の慈悲が欲しい?」
「‥ああっ、へ、陛‥下っ、!」
激しく揺さ振られ、堪えられぬ快感に女は目を瞑った。
美貌の皇帝と名高い男から求められることに恍惚としてしまった女は気づかなかった。
熱を持っていたはずの皇帝の双眸が、酷く冷めていたことに。
.