月無夜
□月無夜
1ページ/7ページ
第四夜《深ノ夜》
「ぅっ‥‥き、ら」
息苦しさにラクスはうっすらと瞳を開けた。
深い闇に何があるのかは定かではなかったが、自分の躯に絡み付いているものは何だか察することができた。
植物の蔓のように絡み付いて離れないのは、キラの四肢だった。どこにも逃がさないように、きつく閉じ込められていた。
「……」
ラクスはキラの腕の中にいる時だけ、安心を感じられる。一人でいると、彼女は死にたくなるのだ。
深い業が、ラクスを覆いつくそうとして、死にたくなるのだ。
それをキラが必死につなぎ止めている。
だからキラが近くにいる時だけは、腕の中にいる時だけが、死ななくてすむ唯一の時間だった。
「ら、‥くす」
キラの寝言がラクスの耳朶を甘く刺激した。
ラクスはキラの胸に自分の顔を押し付けた。押し付けると、それに反応するようにキラの腕の締め付けが強くなった。
「縛っていて。…キ、ラ」
深い闇が包み込む前に、わたくしを捕まえて縛っていて。
貴方の腕の中にいさせて。
.