絶対零ド

□絶対零ド
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第二十話―皇子の思惑―




















「皇女殿下を狙いし兵の一族郎党は全て処刑いたしました。まことに申し訳ございませんでした」














そこで背を向けていた使団の団長がラクスに向き直り深く深く頭を下げた。






ラクスに対して、“エピリア国国王名代”が行ったのは暗殺の件について詫びだけであり、事の次第の報告はしなかった。
















皇女としてだけ見て、次代の皇としては見ない。




彼の態度は明確だった。






















「――っ、この件を、そのようなことでお済ませになさるおつもりですか?!」












団長の態度に我慢ならなかったミーアは母ルレリアの体を押し退け、声を張り上げた。





















「皇女殿下は……っ」









「ミーア、お止しなさい。この方達は“知らなかった”のです」



















ラクスに止められミーアは押し黙った。






伏せていた目を開け、団長と視線を合わす。




















「この方たちの、……エピリア国国王陛下の迅速なるお裁きです。もうこのことを蒸し返すのは止めましょう」




















矢を射ったエピリア兵士は死に、その一族郎党も処刑された。













もう何も言及することはない。













王太子派の兵士の心など、“反王太子派”の使団である彼らが知りえたことではないのだ。
















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